JRA Dressage Training
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095騎乗してのピアッフェピアッフェの初期調教が済んだら、私は騎乗してピアッフェを行うことにしている。最終的には、馬に乗った騎手の扶助によって、馬はピアッフェに移行しなければならないからである。最初に徒歩作業によってピアッフェの運動を理解させ、その後は騎手の扶助に関連させて動作を促す必要がある。言い換えると、徒歩作業者と馬との関係が強くなる前に、騎乗者と馬との強い関係を作らなければならない。徒歩作業者と馬との関係が強くなるということは、鞭を持った者が近くにいなくなると、ピアッフェをしなくなるということである。常に鞭によって追い続けられなければピアッフェをしないという状態になってしまわぬよう、騎乗しての調教は重要であると考える。騎乗してのピアッフェへのアプローチとして、常歩から少しずつ歩幅をつめて移行する方法を採ることが多い。その方法を以下に、まとめてみた。騎乗してのピアッフェの実施方法①・透過性を保った体勢で、常歩の歩幅を1歩ずつ狭くしていく②・両脚を後ろへ引きながら、後躯の活動を促す。馬の反応によっては脚で圧迫または軽打する③・ややアップヒルのポジションになりながら、後躯を沈下させる④・馬が少しでもステップを踏むようであれば、プレッシャーを掛けずに馬の動きに同調するピアッフェを実施中、私は自分のシートの真下に全てのパワーが蓄積されるように常にイメージして、扶助を送ることにしている。騎座の真下にパワーを集めながら、騎座は真直ぐに安定し、コンタクトは馬に透過性を保つためにだけ使い、脚の扶助はできるだけ最小にする。最小にする目的は、鞭の使用の場合と同じで、強い扶助を使い続けていると馬は敏感に反応しなくなるので、弱い扶助によって刺激を常に新鮮に保たなければならないからである。ピアッフェの扶助運動の応用①騎座3つに分けて以下に説明するが、これらは同時に連携して使われており、全てが繋がっていることを忘れてはならない。騎座は、後躯を沈下させるために深く座る。ただし、馬の背の動きを阻害することなく、柔軟に同調して動くべきである。調教の段階で、馬が騎座のプレッシャーを嫌って歩調が乱れる場合は、軽速歩や前傾姿勢によってシートを軽くして乗ることもある。②脚脚扶助は、推進するために必要に応じて使用する。ピアッフェ中に強く圧迫し続けるよりも、馬の動きが鈍くなった時にだけ刺激を与え、動きを呼び戻すように使う。③拳拳は、コンタクトを維持するだけの最小限に留める。しかし、調教の段階では、ハミへの抵抗や突き上げなどがあるため、必要な場合はラウンドした体勢になるまで強く使うこともある。私は、ピアッフェのトレーニングの多くを、常歩からピアッフェへの移行に費やするようにしている。それは、常歩の歩幅を詰めていき、バランスを起こして半減却を行い、その結果としてピアッフェに入るようにするためである。その一連の移行の準備をする度に、馬はピアッフェのステップを踏むようになり、「ピアッフェ≒苦しい運動」という回路を断つことにもなる。この場合、常に僅かに前進しながら、楽になる環境の中でステップを踏む。「同じ場所(スポット)」でピアッフェを行うのが得意な馬とそうでない馬がいる。そうでない馬は、スポットで行おうとすると、苦しくなって抵抗を示すことになる。その抵抗は、立ち上がったり馬体を歪めたりして真直性を欠くことに繋がる。特に、馬体の真直性を欠く場合には、頭頸をやや低く保ち、ステップを踏む中で僅かに前進することを重ピアッフェの扶助常歩からピアッフェへの移行

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