JRA Dressage Training
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093運動の応用②左手で曳き手を持ち、右手で長い鞭を持つ。③・常歩で動き出す前に長鞭で馬の後躯を刺激し、馬が肢を上げて反応を示したら愛撫してよく褒める。左右繰り返し、馬の反応を得る。④・ゆっくりとした常歩で動き出し、鞭を馬の臀部、腰部、飛節、後肢の管後部などに当て、少しずつ刺激して馬の反応を待つ(鞭への反応は馬それぞれに異なるため、馬によっては前へ飛び出す可能性もあり、注意が必要である)。⑤・鞭の使用後は、そのパワーを馬体に溜めるために、前に行くことをできるだけ遮ってしっかりと抑える。⑥・速歩の動きである明確な斜対歩を要求し、それを維持しながらステップをさらに小さくすることを要求する。注意すべき点は、追い込むあまり馬がパニックを起こし、立ち上がったり前へ飛び出したりすることである。必ず馬の反応を見ながら、頭頸がリラックスしているかを確認する必要がある。運動中に馬が少しでもよい反応をしたら褒め、1日で多くを要求しないようにする。我々が求めていることを理解する時間も馬それぞれであり、決して急がず、馬の作業意欲を失わせないことが大切である。徒歩作業については、後躯が活発に動くように後ろから促す者と、前へ飛び出そうとする馬を抑える者の2人体制で行う方法は、馬のコントロールという意味でも人馬の安全という意味でも非常に良い方法である。徒歩作業実施における注意点①後躯の沈下(後肢の馬体下への進出)後躯が沈下するためには、腰部の柔軟性も必要になる。そのため、鞭を尻の上や尾根部(尻尾の付け根)などに当てるなどして、その馬がよく反応して腰を丸めやすい場所を探す必要がある。また、馬を数歩後退させて必然的に馬の後肢が馬体下に入る体勢をとらせ、その後ピアッフェを求める。この方法は、馬が後退して後肢が馬体下に入っている状態で後ろからさらに前進を促されるため、後肢が踏込んで後躯が沈下した丸い体勢を作りやすい。ただし、この方法は一つのきっかけであって、常に行うべきではない。元々反抗心が強い馬は、これを機に立ち上がることを覚えたり、ピアッフェへのアレルギーを発症させたりすることにもなるからである。②鞭のタイミング徒歩作業で鞭を使うタイミングは、後肢が地面に着いて負重し、次に後肢を上げる準備に入っている瞬間に使うと効果があるように思われる。鞭を当てる箇所は、馬の臀部、腰部、飛節、後肢の管後部など、その馬が反応する部分を軽く刺激する。③鞭の使用強度鞭は合図の一つであり、馬を驚かすためのものではなく、あくまでピアッフェに誘う道具として考えるべきである。そのため、鞭を使用しても反応がない場合は一時的に強く使用することもあるが、常に静かに触るように使っていれば、馬は鞭が合図であることを理解するようになる。

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