JRA Dressage Training
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問題解決のパターン◆ケース1歩度を詰めてパッサージュをしようとすると、頭頸が上がってくる088JRA Dressage Training【第二段階】収縮速歩から弾発へ・騎手が半減却を繰り返すことによって、収縮速歩の歩幅が更に短くなり、関節をよく曲げて弾発を作り出すようになる。騎手は、歩度を詰めることは拳を引っ張ることと誤って理解してはならない。もちろん、半減却の扶助を使う際は拳と騎座と脚(推進)を同時に働かせるが、ラウンドした馬の体勢を維持するために「拳を使い続ける」ということがないことも、同時に必要になる。【第三段階】ワーキングパッサージュからパッサージュへパッサージュは、旺盛な前進気勢なくして実施できない運動である。そのため、パッサージュの歩様を浮かせようとするのではなく、「前へ進む」ことを最も重要な前提としなければならない。パッサージュは、この前進する反応があってはじめて成り立つもので、両脚を使えば馬は常に前進する反応があることを確認しなければならない。このように、パッサージュを活発に前進させながら行うことをワーキングパッサージュという。ワーキングパッサージュは、「前進」と「弾発」が半々に存在している状態で、どちらの割合を多くするかを騎手の判断で自由自在に変更できる状態であるべきである。また、ワーキングパッサージュは、パッサージュの調教初期だけ実施するわけではない。日常のトレーニングの中でも、ワーキングパッサージュからパッサージュへ、ピアッフェに入るために更にストライドを詰めたパッサージュへの移行など、パッサージュのテンポと歩幅を自由に変えるための基礎として実施しなければならい。ワーキングパッサージュでは、前進気勢がやや強く前へ出るもので、そこから半減却を使って前進気勢を馬体に溜め、そのパワーを前進気勢とインパルジョンへと変えてパッサージュへ移行する。 パッサージュの扶助①騎座パッサージュの扶助の中で、最も重要な役割を果たす。その使い方は、収縮した速歩のリズムを維持することが主で、積極的に馬に働きかけるものではない。騎手は静かに座り、馬の背の動きを圧迫せず、馬体に溜まった前進気勢を維持するために騎座を使うようにする。②拳主に騎座と連動して使用し、半減却を作用させる際に受動的に使う。しかし、騎座を使いながらコンタクトのみを譲ることもできなければならない(扶助の独立)。パッサージュ中に頭頸が上がってくる場合には、拳を積極的に使って下方へ伸展させるように使用する。③脚前進気勢が足りない場合は、馬が前へ飛び出すくらいに両脚を強く使い、その後再び馬を丸くして力強いパッサージュを維持する。馬自ら動いている場合には、脚の使用は控える。常に脚で圧しながらパッサージュを維持するのではなく、あくまで馬の意思で動いていることが大切である。それによって一定のリズムを保ちやすくなる。左右別々に脚を使う方法もあるが、左右に揺れるパッサージュになったり、騎手の脚の扶助の度に緊張してリズムが乱れたりすることがあるので注意しなければならない。中間速歩とパッサージュの関連性パッサージュは最も収縮した速歩のひとつであるが、中間速歩との関連も忘れてはならない。収縮速歩の事項でも述べたが、中間速歩と同じくらいの前進気勢がパッサージュにおいても必要になる。一見すると、パッサージュは上へ浮遊させることのみを目的としがちであるが、前進するパワーが全ての源になり、その前進気勢を馬体に溜めることによってパッサージュへと変化させる。よって、パッサージュの調教の過程の中に、中間速歩⇔パッサージュという移行を繰り返し要求し、常に前進気勢を失わず、力強さを保ち続けなければならない。この問題は、パッサージュの調教を始める初期段階で解決しておくべきである。収縮は、常にLDRとリンクして調教を積み重ねる必要がある。しかし、もし頭頸が上がるような事態になれば、パッサージュを継続することよりも、頭頸を下方へ伸展させてラウンドさせることを優

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