JRA Dressage Training
88/116

◦調教日誌◦この馬のピルーエットの調教は、困難を極めている。その理由は、収縮しても後躯が沈下しにくい胴長の体型にある。また、収縮すると後肢で踏ん張らず、速歩や常歩へ勝手に移行してしまう。また、ハミへの抵抗も一層強くなり、同時に背に緊張が走って後躯が沈下しないという悪循環を繰り返してしまう。この馬は、私が経験した中で最もハミ受けが難しく、収縮時の抵抗が激しい。馬の収縮時の抵抗に対抗するために、一時的にこちらも力で抵抗するが、到底敵わない。この場合は、地道に収縮→LDRを繰り返し、馬の理解を求めるしか方法はないと考える。ピルーエットの調教では、後躯を踏み込ませながら、ハミへの抵抗も取り除いてリラックスさせる必要がある。活発な動きを要求しながら、一方ではリラックスを求めて背を柔軟にさせるという動作を、同時に要求していかなければならない。◦調教日誌◦この馬は後躯に力があり、パワーを溜めることができるため、調教は簡単であった。また、バランスも自分で支えているため、リズムも均一で整った美しいピルーエットである。駈歩の歩度を詰めながら、内方姿勢をとるだけでピルーエットの体勢になった。気を付けたことは、テンポだけであった。調教していても、驚くほど楽だったという記憶しか残っていないほどである。086JRA Dressage Training伸長駈歩とは、文字通り駈歩の歩幅を広げる運動である。しかし、その馬の持つ最大限跳躍した駈歩を表現することは簡単なことではない。駈歩をただ闇雲に速く走らせることは、伸長駈歩ではない。正しい伸長駈歩は、馬のフレームから精神状態までの全てをコントロールしている状態でなければならない。伸長速歩と同様に伸長駈歩での馬のフレームは若干前に伸び、鼻梁は垂直線からやや前に出ることを許される。伸長駈歩の調教段階は、伸長速歩と同じように、中間駈歩から収縮駈歩、そのベースから伸長駈歩へと発展していく。伸長駈歩の調教段階【第一段階】フレームを丸める収縮駈歩で馬を完全にコントロール下に置き、フレームをやや強めに丸める。歩幅を広げると馬体全体が伸びてフレームまで崩れやすくなるため、この時点で十分に丸めておく。【第二段階】中間駈歩収縮駈歩でフレームを丸めたまま、中間駈歩へ移行する。収縮から中間、中間から収縮への移行を繰り返し、どちらの移行の場合にも頭頸の位置はやや低く保ち、抵抗がないことを確認する。【第三段階】伸長駈歩第二段階から更に歩幅を広げた伸長駈歩を求める。この場合も馬は緊張することなく、背を自由に使い、丸まったフレームを維持する。伸長駈歩を長い距離実施するのではなく、完全にリラックスして歩幅を伸展すれば、すぐに中間駈歩、収縮駈歩へ移行し、常にコントロール下にあることを確認しなければならない。競技での伸長駈歩これは、主に斜線上で行われる。収縮駈歩から伸長駈歩へ移行し、再度収縮駈歩に移行して踏歩変換を実施する運動である。一見簡単に思われるが、非常に難度が高く、計算された準備と技術が必要になる。斜線上の伸長駈歩は、斜線手前の偶角の前から準備が始まる。偶角前では半減却を繰り返しながら力を馬体に溜め、偶角を内方姿勢でスムーズに回転し、斜線上に入る前にできるだけ早く馬体を真直ぐにして伸長駈歩に入る。馬体が真直ぐになるまでは、伸長駈歩に移行してはならない。伸長駈歩の間はリラックスさせてフレームをやや伸展させ、目標とするポイントに向かって最ゴールゲッター号トレジャーハント号6.伸長駈歩

元のページ  ../index.html#88

このブックを見る