JRA Dressage Training
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085LDRのポジションとは、馬の頭頸が低く、深く、丸い体勢をとっていて、柔軟性を求めて様々な問題を解消するための運動である。一見すると、馬が巻き込んでいる体勢のように見えるが、騎手の意思によって下顎の譲りや角度などの全てをコントロールしている。LDRのポジションを求めるのは、次のような馬に対して用いられる。・ 頭頸を上げて背を張り、頭頸を伸展しない馬・ 下顎を譲らず、ハミに抵抗する馬・ 「ハミ受け」が安定しない馬・ 運動に集中せず、物見をする馬・ 収縮を求めた際に、馬体が力んでいてリラックスしない馬などに用いられるが、馬が求められた体勢を理解して受け入れた場合は、騎手の拳の作用は極力少なくし、バランスが起きた体勢に戻しても問題が解決していれば長時間多用しないようにする。この方法は、あくまで一時的に強く頭頸を譲らせて、騎手が求めていることを理解させるものである。そのため私は、LDRとアップヒルのポジションを運動の中で組み合わせて使うようにしている。例えば、前半はLDRのポジションで柔軟性を求め、運動後半にはアップヒルのポジションで運動する。また、LDRのポジションは、バランスを前へ崩す運動ではない。頭頸だけをき甲の関節から屈曲させるため、重心までもが前へ移らないようにしなければならない。その注意点を騎手が把握した上でうまく利用すれば、様々な問題を解決する方法として非常に有効である。反対に、LDRを用いるべきではない馬は、・ ハミの作用から逃れようと巻き込む馬・ バランスを前へ崩す馬などが挙げられる。これらの馬は、LDRを用いることによってさらにそれらの問題が悪化する可能性があるので、使用すべきではない。LDRの扶助① 外方手綱を支点に、内方手綱で内方へ屈曲を求めて譲らLDR(Low Deep Round)のポジションせる② 馬が内方へ屈曲しながら下方へ伸展すれば、コンタクトを緩めて屈曲を和らげる③ 頭頸が低い位置で安定すれば、軽いコンタクトを保って維持する④ 頭頸をもっと低い位置にしたければ、その位置から更に①からの扶助を繰り返すこれらの扶助を毎回同じように馬に要求し、頭頸を丸くした体勢になることが最も楽な体勢と理解することによって、騎手の扶助は日々軽くなり、馬が自ら姿勢を自得するようになる。バランスが起きた体勢項を頂点として、鼻梁のラインが地面に対して垂直になり、ハミを受けて下顎を譲った体勢になっている。頭頸を肩の上に乗せて、馬がその重さを支えている。頸の付け根の関節(き甲)から下方へ下げる。鼻梁のラインは垂直よりも内に入る。下顎を譲る角度は若干狭くなることがあるが、ほとんど変わらない。必要に応じて、頭頸を更に低い位置に置くこともできる。運動の応用LDR(Low Deep Round)のポジションとは

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