問題解決のパターン◆ケース1収縮駈歩を詰めて来ると、速歩になってしまう。後躯の沈下が見られない082JRA Dressage Trainingも増すことになる。①・ワーキングピルーエットと同様に浅い内方姿勢をとりながら、収縮駈歩を更に詰める。②・バランスを後躯へ移行しながら、内方の騎座に乗って外方の脚と手綱で内方に向かって押す。③・描く円の前半は小さく、後半は大きくするイメージを持つ。④・描く円が小さくなり過ぎる場合は、内方脚で前進を促して後肢の動きが止まらないようにする。大きくなり過ぎる場合は、更に後躯にバランスを移し、外方手綱を押して前躯を旋回させる。⑤・360度以上旋回しないように、始めたライン上に戻る。4分の3ほど旋回したところから「前へ」の扶助を強くして旋回し過ぎることを防ぎ、直線上へ馬体を乗せて旋回を終える。また、ピルーエットのトレーニングは、調教初期は輪線上で行うことが多いが、レベルが上がるにつれて競技と同じ斜線上や中央線上において実施する必要がある。ピルーエットを行うための駈歩は収縮がなされていて、かつ後躯が活発に活動している状態でなければならない。確かに、これらのことが容易にできる馬と、そうでない馬がいる。駈歩が収縮してくると、馬自ら後躯を沈下させながら強く踏ん張って収縮に耐えようとする馬と、後躯の動きが鈍くなって駈歩を維持できずに速歩になる馬もいる。前者の場合、あまり苦労することなくピルーエットを受け入れる力がある馬であることは明らかであり、このような馬は後躯が柔軟で沈下しやすい。ピルーエットだけでなく、ピアッフェなどの運動も後躯が沈下した良い体勢をとる可能性が高いと言える。しかし、後者の場合は大変難しい。こういう場合は収縮駈歩の調教に立ち返るべきで、ゆっくりとした収縮駈歩の中でも、後躯が活発に動き続けることが必要である。収縮を求めると後躯のエンジンが切れてしまうようであれば、手荒い方法ではあるが、鞭を使用して動かなかったことに対するペナルティを与えて馬の意識を自ら前進することに集中させ、ステップを小さくしながらも速いリズムを保って動き続けることを教えなければならない。収縮駈歩で活発なままステップを少しでも小さくできれば、直ちにコンタクトを楽にして、ステップを小さくできたことに対する報酬を与える。その繰り返しにより、収縮の意味を馬が理解し、収縮した駈歩を自ら維持しようとする意思が馬に生まれてくる。なぜなら、駈歩の収縮時に速歩に落ちれば再び駈歩を求められ、なおかつペナルティも受け、逆に維持すれば褒められるからである。騎手はこの馬の反応を感じ取り、馬がショートステップの駈歩を少しでも維持したら、すぐに通常の駈歩、常歩にして報酬を与えるべきである。そして何度も同じことを繰り返すと、同じように馬は自ら収縮に耐えようとする。騎手が求めれば何時でもそれに応えようとするという関係を築きながら、徐々に収縮の時間を長くしていく。◆ケース2馬がピルーエットを急ぎ、勝手に旋回してしまう騎手が指示する前に馬が勝手に急旋回してしまうのは、騎手がワーキングピルーエットを正しく実施していないために起こる現象で、修正する方法はワーキングピルーエットからもう一度見直すしかない。ピルーエットを勝手に急旋回している時の馬の体勢は、内方姿勢をとらずに、逆に反対姿勢をとっていることが多い。その場合の反対姿勢は、馬の内方の肩が前へ出て内方に倒れ込んでしまっていて、馬は自分の意思で勝手に旋回して騎手が制御できないことになる。その体勢にならないためにも、内方姿勢をとることは重要である。正しく内方姿勢を維持するだけで、馬は騎手のコントロール下に入り、スピードをコントロールすることができる。また、内方姿勢をとって外方手綱を外へ開くように使い、馬の肩が内方へ倒れ込まないようにするとともに、1歩の旋回毎に1歩の前進を挟みながらピルーエットをすることによって、騎手の意思で旋回しやすくなる。
元のページ ../index.html#84