JRA Dressage Training
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073◦調教日誌◦この馬は、踏歩変換を調教するのにさほど時間が掛からなかった。調教初期は後肢の変換が遅れる傾向にあったが、一度理解した後はタイミングを外すことは全くなかった。問題は、左右の変換に差があることであった。左から右への変換は非常に大きくダイナミックな動きを見せるが、右から左への変換は、ジャンプが小さく表現力が乏しいものであった。連続踏歩変換の訓練を開始した時期にもそれが僅かに残っており、左右の差は見てとれるものだった。その後は、連続踏歩変換の訓練を重ねていくうちに左右の変換の差は少なくなっていった。◦調教日誌◦調教を始めた4歳から、この馬の駈歩のベースは活発であったため、将来的に踏歩変換をすることは難しくないだろうと予測していた。しかし、背中が長くて硬く、後肢の踏み込みが悪いため、踏歩変換に多くの時間を費やすことになってしまった。左右の差も大きく、左から右への変換は後肢が遅れることが殆どで、その矯正には数ヶ月掛かった。歩毎の踏歩変換は7歳時には15回以上連続で完成したものの、左右の大きさの違いは未だ解消されているとは言えない。よく聞かれる質問に、「どのくらいの頻度で大勒を付けて運動しますか?」や「水勒で乗ったほうがいいですか?」などがある。この問題も各個人の意見や、その馬によって対処法が分かれるところである。私は、4歳からの初期調教は水勒で運動し、収縮運動を始めたころに大勒を装着するようにしている。概ね6歳半ばから7歳までには大勒を慣らし始めることが多い。これも馬の調教進度によって早く装着することもあれば、口に問題がある馬には慎重になることもある。どれくらいの頻度で大勒を装着するかという問題であるが、私はほぼ毎日大勒を装着して運動している。ただし、大勒を装着してはいるが、使用するのはほぼ水勒のみである。初期調教の時点で、水勒だけで乗れるように調教することが基本にあるため、大勒を装着しても水勒をメインに使うことには変わりない。それゆえ、大勒を付けているからといって馬に強く作用することはないため、毎日装着しても害はないと考えている。また、大勒を装着すると問題が出てくるからといって、水勒に折り返し手綱などを装着して普段の運動を済ませる方法を選択する場合があるが、私は逆の方法を選択する。大勒で問題があるからこそ、大勒を装着して問題を解決する方法を選択すべきであると考えている。大勒を嫌う馬は、その強い作用から逃れるために様々な反抗を繰り返す。しかし、問題は「その馬」にあるのではなく、それを「使う人」によってもたらされる。それゆえ、大勒の使い方が馬に対して正しく、ソフトに、心地よく作用しているかどうかをよく省みる必要があるだろう。運動の応用ホワイミー号ゴールゲッター号水勒と大勒どちらで運動するべきか

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