問題解決のパターン◆ケース1踏歩変換を要求するとハミへの抵抗を示することがある。多くのライダーは、この時点で踏歩変換の調教を諦めてしまう。しかし、これは調教初期によく見られる問題である。ハミに対して抵抗した場合は、騎手は騎座と拳を静定し、それ以上頭頸が上がらないようにする。抵抗が強い場合は、折り返し手綱などで限界点を理解させる。しかし、踏歩変換は常に前進している運動であるため、拳や調教補助具で固定して前へ動けない状態を作ってはならない。伸び伸びと前進している中にも、ハミへの抵抗がなくて透過した体勢で踏歩変換のトレーニングをする環境を、騎手が作り出さなければならない。◆ケース2踏歩変換の扶助を出しても、何も反応がない先ず、常歩から駈歩の発進がスムーズにできているかを確認する。できている場合は、踏歩変換の扶助を馬が理解していないことが原因と考えられるので、一時的に扶助を強く出し、踏歩変換の扶助に対して反応しなければならないことを馬に理解させるべきである。踏歩変換を実施する図形は、明らかに手前を換えることを馬が認識するようなものでなければならない。何度か同じ地点で踏歩変換の扶助を出すことによって、馬は事前に手前を変換することを察知してくるようになる。このような経緯から、扶助に対して無反応から、少なくとも前肢を換えるようになる。この時点で馬は段階的に踏歩変換を理解し始めていると判断できる。例えば、右手前駈歩から左手前駈歩に方向変換する状況を分りやすく作り出すには、右手前で埒や壁に向かって走り、ぶつかる直前で左に方向変換をする。馬の姿勢を入れ換え、方向変換と同時に脚の入れ換えを実施する。荒っぽい方法ではあるが、これを何度か繰り返し、右手前から左手前へ方向変換するという認識が馬に表れてくるようにする。その方向変換と踏歩変換を同時に行うことよって、馬が踏歩変換することを理解しやすいようにする。私は、無反応の馬に対してこのような方法をとり、段階的に要求を高めていくようにしている。064JRA Dressage Training歩変換中の左右のふらつきが小さくなって真直性が増すことになる。初めての踏歩変換踏歩変換を調教する場合、馬によっていくつものケースが考えられる。例えば、跳躍力のある駈歩をする馬に対しては、何ら苦もなく自らフライングチェンジしてみせるが、問題はそうではない馬の場合である。跳躍力が乏しい馬にとって踏歩変換は難関であり、騎手も相当な忍耐力を持ってトライしなければならない。どの馬に対しても先に述べた一連の扶助を送って変換させるが、初めて踏歩変換を実施する場合、無反応か前肢だけを変えて後肢を換えないことが多い。ここから騎手が辛抱強く実施することによって、馬が何を要求されているかを理解し、踏歩変換を覚えるようになる。その馬が踏歩変換をしやすいタイミングや図形を探し出し、できるだけ同じ場所で実施することで、踏歩変換を事前に予感させることが必要になることもある。逆に馬が先読みし過ぎる場合は、馬の予感を裏切って同じ場所で実施せずに、騎手が扶助を出すまで待たせるなどの対処をする。馬によっての反応は様々であるため、どのような対応をとるかは騎手の判断に委ねられる。騎手は自分の経験から最良の方法を採用することが必要となる。 私は、踏歩変換の調教を開始する前の準備段階で、馬が駈歩発進を十分に理解しているかを確認することにしている。その後、踏歩変換を何度もトライすることになるが、騎手は闇雲に行うのではなく、なぜ反応しないのか、なぜ失敗したのか、馬の体勢はどうなっているかなどをよく検討して馬だけの責任にするのではなく、客観的に騎手の扶助を振り返ることにより成功する可能性が上がって行くと思われる。踏歩変換を何度も試みることによって、馬はその扶助が苦しいものと理解してしまい、ハミを突き上げて反抗す
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