JRA Dressage Training
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063◦調教日誌◦この馬は左右の屈曲の柔軟性に差があり、右に比べると左へのベンドが固い傾向がある。よって、右へのハーフパスは非常にスムーズに調教が進み、右内方姿勢をとって肢を深く交差させ、容易にハーフパスをすることができた。それに比べて左側は、左内方姿勢をとること自体に問題があるため、ここに多くの時間を費やすことになる。輪線運動を多く行い、内方姿勢を強く要求するようにし、苦手な手前のベンドを多くとり、最終的に左右均等へ近づくようにする。また、この馬にハーフパスでとるべき姿勢を理解させるため、常歩で屈曲を求めることも地道に行っている。運動の応用踏歩変換とは、駈歩の空間期で新しい手前に変換することである。この運動を調教するにあたり、いくつかの準備段階を踏まなければならない。下記の要件を確実にクリアしながら、踏歩変換の調教を進める必要がある。踏歩変換の調教開始のための要件①・騎手の駈歩発進の扶助に馬がすぐに反応して、騎手が求めた手前で発進できること(速歩⇒駈歩、常歩⇒駈歩)②反対駈歩がバランスを崩すことなくできること③駈歩で外方姿勢がとれること④透過性のある体勢での収縮駈歩ができること⑤・シンプルチェンジができること(シンプルチェンジとは、収縮駈歩から2、3歩の常歩の後、すぐに反対手前の駈歩発進をすること)踏歩変換の調教方法(右手前から左手前)①透過性のある体勢で収縮駈歩をする②・右手前駈歩をしながら馬の姿勢を反対の左内方姿勢(外方姿勢)にし、馬に手前が変わる予感をさせる③・駈歩の空間期の直前(右前肢の離地期)に、新しい外方脚(右脚)を後ろに引いて圧迫し、新しい内方脚(左脚)は外方脚よりも前に位置させて変換(左駈歩発進)の合図を出す踏歩変換時の騎座のポジションとは?脚の入れ換えはあくまでも合図として行うものであり、調教初期に反応がない場合に強く使うことはあっても、調教進度が進むにつれて脚の入れ換えと、それに伴う騎座のポジションの変化だけで馬が反応して踏歩変換を実施するように導き、最小の扶助にしていかなければならない。騎座のポジションの変化とは、内方騎座と外方騎座の前後の位置関係が入れ換わることをいう。内方騎座は外方騎座よりも前出していて、当然のことながらその下にある脚の位置も同じである。踏歩変換の扶助を出す際、内方と外方の脚の位置を入れ換えると、同時に騎座の位置も入れ換わる。踏歩変換のトレーニングを積んで行くと、馬は騎手の扶助を敏感に感じることができるようになり、最終的には脚を強く圧迫しなくても、脚と騎座のポジションが入れ換わることによって変換するようになる。そうすると、脚での扶助が最小限に抑えられ、踏ゴールゲッター号4.踏歩変換(フライングチェンジ)

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