「騎手の柱」と「馬の屈曲の軸」ハーフパスの初期調教段階では、馬が行くべき進行方向と、とるべき姿勢を理解しない場合がある。その場合、例えば左へのハーフパスを行う場合、最も重要視するポイントは左への屈曲を維持することであり、左への内方姿勢を保ち続けるために「肩を内へ」をハーフパスの実施中に取り入れるようにする。左ハーフパスに入る前に、左「肩を内へ」で左内方姿勢をとり、外方手綱と外方脚によって進行方向へ推進する。その際、騎手は内方騎座と内方脚を「騎手の柱」として作用させ、馬体のき甲部分の内側に「馬の屈曲の軸」を作って屈曲を保つ。その後、ハーフパスを継続している間に姿勢が浅くなるようであれば、再び左「肩を内へ」の体勢をとり、新たに屈曲を作って姿勢をとり直すようにする。ハーフパスの初期調教初めて行うハーフパスを難なくできる馬は少ない。騎手は、ハーフパス中に内方姿勢を保てなかったり、リズムを崩して運歩が一定でなかったりすることは当然と考えて、失敗の中から改善する点を見つけて調教を進めるべきである。私はこの運動を調教する際は、初めに常歩で行うことにしている。常歩で「肩を内へ」と「腰を内へ」ができてから、同様にハーフパスも行うようにしている。そのような段階を慎重に踏んだとしても、速歩でのハーフパスは馬にとって何を要求されているのか、初めは分からないことが多い。調教初期では、浅めの内方姿勢を保ちながら、角度が浅いハーフパスができればよしとすることにしている。調教の初めから角度を深くして横へ進むことを重視すると、ハーフパスを実施した途端に速歩のカダンスが失われる結果になることが多い。この時期に最も重要視すべき点は、速歩のカダンス(律動感)とリズムが一定で、インパルジョン(弾発)を失わないようにすることである。やさしいハーフパスのトレーニングパターンハーフパスの調教を始める段階として、20m×60mの騎手の柱馬の屈曲の軸056JRA Dressage Training馬場で10mの半巻乗りを行い、斜線上でハーフパスを実施する図形が馬にとって最もやさしい方法である。騎手が気を付けることは、半巻乗りに入る前の蹄跡で「肩を内へ」を確認し、半巻乗りの輪線上でしっかりと内方姿勢をとることである。その後、斜線に入る直前に「肩を内へ」を3歩から4歩ほど実施する。その体勢を維持したままハーフパスに入る。ハーフパスの角度が浅い場合の矯正方法ハーフパスでは内方姿勢を正しくとり、前肢と後肢がそれぞれ交差していなければならない。ハーフパスの角度が浅くなるということは、その交差が浅い、もしくは前肢は交差していても、後肢は直行進している場合が多い。この場合の騎手の対処法として、単純に外方脚だけを使用してハーフパスの角度を矯正しようとすると、馬の体勢までも崩すことになってしまう。また、後肢の交差を深くするには、馬の腰の位置だけでなく肩の位置も考えなければならない。
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