JRA Dressage Training
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055◎ハーフパス(横歩)運動の応用ハーフパスは、進行方向側へ内方姿勢をとり、馬の肩をやや前方に位置させたまま斜め前方へ進む運動である。この運動を実施するには、「肩を内へ」、「腰を内へ」、斜め横歩などの二蹄跡運動が正確にできていなければならない。馬の前肢や後肢が交差する運動のため、内方姿勢からさらに側方屈曲を求め、両手前が均等な柔軟性を持って動けるようにしなければならない。ハーフパスを要求する課目では、速歩と駈歩でそれぞれ左右1回ずつ合計4回実施することになるため、人馬共に確実に習得すべきである。以下、「ハーフパス」を調教する段階を説明したい。ハーフパスの調教段階【第一段階】内方姿勢の確立ハーフパスを行う上で最も重要なことは、輪線上で内方姿勢を確立することである。内方姿勢を充分にとれなければ、この運動はできない。内方姿勢はどの場面でも使用するものであり、たとえ直線運動であっても、「頭頸のみ内へ」などの体勢をスムーズにとれなければならない。【第二段階】「肩を内へ」そして、「ショルダーフォア」と「肩を内へ」を実施し、「腰を内へ(腰を外へ)」を確実にできるようにする。これらの運動を念入りに行い、左右の柔軟性と騎手の脚に対する馬の反応を得ておく必要がある。私は、ハーフパスの前段階として、この「肩を内へ」を重要視している。「肩を内へ」の体勢はハーフパスの体勢と共通しており、進むベクトルの方向を外方脚で変えることによって、ハーフパスへと入ると認識している。「肩を内へ」が確実にできるようになったと判断する材料は、収縮速歩のカダンスを失うことなく、同じ姿勢と角度を保ち続けることができるかどうかということである。【第三段階】ハーフパス「肩を内へ」を数歩実施後に、外方脚と外方手綱を使って斜め前方へ向かって圧力を掛け、「肩を内へ」で進んでいた方向から、姿勢はそのままで進行方向を変えていく。この時騎手は、内方騎座と内方脚が「騎手の柱」であることを今まで以上に意識しなければならない。この「騎手の柱」は、内方に屈曲するために重要な「馬の屈曲の軸」に必要になる。この「馬の屈曲の軸」がなくなることによって内方姿勢が維持できなくなり、ハーフパスの姿勢が崩れる結果となることが多い。この段階では、最初に「肩を内へ」を数歩実施し、次にこの姿勢を維持したままハーフパスを数歩実施し、再び「肩を内へ」に戻る、を繰り返し行うことによって馬の理解を得ることが望ましい。ハーフパス(横歩)

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