ホワイミー号 [13歳 ハノーファー]アップヒルと歩調ドイツ研修レポート❹頭頸をやや低めに保ち、透過性を得ることを昨年末から訓練の中で意識して行ってきた。その甲斐があって、ハミへの抵抗が少なくなり、安定性も出てくるようになってきた。次のステージとして、頭頸を上げてバランスを起こし、アップヒルのポジションで動くことを要求していった。シュミット氏は、この体勢を訓練の中でも求め、それが当たり前のようにしていくスタイルを持っている。彼のトレーニングを見ていても、それがよく分かる。同じ馬を生徒が乗っている時と、シュミット氏が乗っている時を較べると、馬の体勢が明らかに違うことがある。生徒も高い技術を持っているため、一見すると良い体勢で動いているように見える。しかし、シュミット氏が保つアップヒルのポジションを見ると、その違いは歴然としている。騎手が拳で馬の体勢をキープしている様子は全くなく、馬が自らアップヒルのポジションを維持しているため、常に軽いコンタクトで馬と繋がっているのが分かる。全ては騎手の推進と、それを受ける騎座とコンタクトの総合的な関連の中から生まれるため、数値や文章で表現することは残念ながらできない。仮に、感覚的なことをいくら詳細に文章にできたとしても、それを実行することは容易ではない。しかも馬術の場合、乗る馬によって扶助の度合いを変えていき、その馬に合った強弱を見つけ、その馬が最も快適な精神状態のまま運動ができるようにしなければならない。経験の豊かなライダーは、初めて乗った馬でさえもそれが分かるようになる。それに加え、その馬に何が足りないのかを判断し、それを補うような扶助を出し、全てのバランスを整えることができる。ホワイミー号の場合、特に駈歩運動での体勢を改善する必要がある。この馬の駈歩は歩幅が小さく、躍動感に欠けると言ってよい。特に若馬の頃は現在よりも収縮度が低く、馬体が伸びた状態で運動していて、それはグランプリにクラスを上げても後遺症として残っていた。しかし、ここ数ヶ月のトレーニングで、収縮しつつも前進気勢を失わずに活発な歩調で駈歩運動をするように努力したため、頭頸が起きて馬体が収縮し始め、課題である駈歩運動での手綱が長くなる傾向が徐々にではあるが、改善してきている。駈歩を、活発な歩調をベースにしたアップヒルのポジションにすることによって、様々な有効な点を得られた。以前は、踏歩変換の前に新たに推進しなければならなかったが、その必要はなくなる。ベースの動きが上がっているため、常に推進し直す扶助がなくなり、移行がよりスムーズにできるようになった。今後は競技会本番で実施していきたい。(2008年3月報告書より)054JRA Dressage Training
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