JRA Dressage Training
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◎「頭頸のみ内へ」050JRA Dressage Training二蹄跡運動とは、前肢と後肢が二つの蹄跡を進む運動である。騎手の扶助に従って馬が4肢を交差させたり、肩や腰の位置をコントロールしたりすることによって、肩や後躯の可動域を広げて柔軟性を養い、筋力をアップさせる効果がある。二蹄跡運動には様々なものがあるが、ここでは「頭頸のみ内へ」(二蹄跡運動の前段階)「ショルダーフォア」(「肩を前へ」)「肩を内へ」「斜め横歩」「ハーフパス」について説明したい。「頭頸のみ内へ」とは、馬体はまっすぐ進み、頭頸のみやや内へ向けるもので、二蹄跡運動の前段階として運動する。「ショルダーフォア」とは、「肩を内へ」の前段階の運動と考えられるが、内方姿勢の項目でも述べたとおり、多くの場面で応用することができる。後躯が内側へ入り込んで馬体の真直性を失っている場合や、頭部を内方へ屈曲させて柔軟性を求める場合にも用いられる。「ショルダーフォア」の扶助は、例えば右手前の場合、騎手の内方脚(右)を腹帯のすぐ後ろに置き、やや圧迫して外方へ押し出しながら、外方手綱を支点として内方手綱(右)を使って頭頸を内側へ入れる。騎手の外方脚(左)は、内方から押し出された推進を受け止め、外に膨れないようにする。「ショルダーフォア」中も速歩のカダンスが継続して維持されていなければならない。もし、カダンスが失われたり、リズムが崩れたりした場合は、求める角度を小さくし、頭頸のみ内方へ屈曲させる(「頭頸のみ内へ」)ところに戻り、もう一度初めから組み立て直さなければならない。「ショルダーフォア」の運動は、常歩、速歩、駈歩を問わず、あらゆるケースで応用すべきである。「肩を内へ」とは、前躯のみが内側に入り、後躯は蹄跡上を真直ぐ進む運動である。「肩を内へ」の馬の体勢では、内方の後肢が馬体下へ進出して後躯に多くの負荷が掛かるため、後躯を鍛えて収縮に耐え得る筋肉を付けるトレーニングと捉えることもできる。この運動の前提として、内方姿勢が確立している必要がある。内方脚を使うと項を捻ることなく馬体を内方へ屈曲し、その屈曲度を自由に調整できるようにする。私は、この運動を初めて行う若馬はもちろん、二蹄跡運動が苦手な馬には、速歩ではなく、まず常歩で側方への屈曲を求めるようにしている。常歩での動きはゆっくりであるため、騎手ははっきりとした扶助を送ることができ、馬も理解しやすいと考えている。「肩を内へ」の実施方法①・・「肩を内へ」を始める直前に、隅角通過または巻乗りをし、内方姿勢をとって準備をする。②・内方姿勢をとっている間、内方脚と内方手綱を使って屈曲し、外方手綱に支点がある状態にする。(内「頭頸のみ内へ」「肩を前へ」(ショルダーフォア)「肩を内へ」(ショルダーイン)3.二蹄跡運動

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