003発刊にあたってJRAの事業の中心は競馬の開催であることは言うまでもないが、馬事普及活動も事業の中の大きな柱としている。これは活動を通じて、馬事文化の発展、乗馬普及および馬術振興に寄与していくことが、競馬の健全な発展のために必要不可欠であると我々は考えているからである。JRAは、東京オリンピック(昭和39年)総合馬術競技に出場した千葉幹夫職員を馬術先進国の技術を習得させるためにフランス共和国のソミュール騎兵学校(当時)に昭和41年に派遣したのを皮切りに、その後もソミュールやその他の馬術先進国に多くの職員を派遣するとともに、オリンピックや世界馬術選手権への参加を通じて、騎乗・調教技術、指導方法などの習得に努めてきた。そして、これらの職員は帰国後、指導者としてJRA内外における講習会等に積極的に参加し、日本全国の馬術競技者に技術・知識の還元を行ってきた。このような普及活動はJRAという組織ゆえにできることであり、これらの活動によって日本馬術の向上に大きく貢献できていると自負しているものである。また、馬事普及を進めていくには、正しい馬術技術の習得が必要不可欠である。本苑では、高度な騎乗・調教技術に基づいたJRA職員の人材養成を主要業務として行っている。本苑での技術習得がJRA各事業所における馬術指導のレベルアップを促し、それが全国の乗馬スポーツ少年団、そして高校・大学の馬術部を経て、競馬サークルにおける騎手・調教師・調教助手の調教技術の向上に寄与しているものと確信するところである。本書を著した北原職員は、JRAの乗馬スポーツ少年団、学生馬術界での活躍を経て、JRAに入会。以来、本苑における馬事普及業務に専念しながら、馬術競技の最高峰である世界馬術選手権にも出場している。同職員の足跡はまさにJRAの馬事普及そのものであると言えよう。この本は、すでに出版されている海外の指導書の翻訳でもなければ、世間一般に知られている技術の解説書でもない。同職員が実際に国内外で受けた指導をベースにして、それについての自分なりの解釈を加えて、“北原流”の感覚と言葉で著した独自のテキストである。ここに記されている内容が、多くの馬術関係者にとって、馬との関係を見直し、馬をより良く調教するためのヒントとなれば幸いである。今後もJRAは日本の馬術界の発展に貢献するとともに、世界に通用する技術の習得・向上に努めていく所存である。そして、このことが日本の馬場馬術界だけでなく、馬に携わる多くの方たちの後押しとなり、ひいてはさらに多くの方が乗馬・馬術を楽しむようになり、馬に乗らない方にも馬の素晴らしさを伝えて行くことができれば無上の喜びである。JRA馬事公苑 苑長 三笠貞弘発刊にあたって
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