JRA Dressage Training
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速歩のリズムドイツ研修レポート❷競技会で競技を観戦したり、いろいろな厩舎を訪れて練習を見学したりして様々な人馬の運動を見ていると、騎手が求めている「速歩のリズム」が日本人が理想としているリズムより速いように感じる。ただピッチが「速い」という意味ではなく、インパルジョン(弾発)を伴った活発な速歩と言うべきだろうか。速歩に躍動感を持ち合わせていることで、見る者を魅了させてくれる動きになる。演技している速歩が前進気勢に満ちていて、それでいてリラックスしていることを見て感じ取ることができる。シュミット氏はホワイミー号と私に、それと同じことを常に要求する。通常の訓練でも、カダンス(律動感)とインパルジョン(弾発)を保った速歩が更に活発な動きになるまで、「肩を内へ」やハーフパスなどの運動に移ることはない。時には、速歩に前進気勢や弾発を要求することだけで終わる日もある。ではその要求されている速歩の条件とは何であろうか。【カダンスとインパルジョンを伴った速歩を作る条件】1.透過した状態であること2.騎手が脚で常に推進しなくても、馬の意思で前へ進んでいること3.一定のリズムで、カダンスを伴ってスイングしていること上記のように言葉にすると一見簡単な条件に見えるが、この状態を維持し続けることは容易ではない。特に、ホワイミー号のように前進意欲が少ない馬にとっては、弾発のある速歩を生み出すことが難しい。【カダンスとインパルジョンを伴った速歩を作る扶助】1.透過させ、それを保つためには、騎手の拳と騎座と脚による扶助のバランスが重要になる。馬の状態によって、騎手は何の扶助が足りていて何が足りないのかを判断し、適切に対処しなければならない。具体的には、拳と騎座と脚の使用する割合を馬の反応によって微妙に変えて、馬が最も楽に動ける場所を探してみることである。これは、騎手の経験から培った感覚によってのみ決められることかもしれない。また、それらの扶助によって速歩の中でハミに対して抵抗がなく、頭頸が安定するようにする。これらは、初期調教からの積み重ねで成り立つものなので、これができなければ基本に戻り、問題点をクリアしてから次のステップに進まなければならない。2.この馬のように前進気勢が乏しければ、騎手が常に脚によって推進しようとしてしまう。しかし、馬は騎手の扶助に対して常に敏感に反応すべきであるため、常時馬の腹を脚で圧迫したり拍車を使ったりしないようにしなければならない。脚の前進する扶助に対して無反応である場合は、馬がはっきり反応するほど強く、時には鞭を使って馬に前進することの重要性を考えさせる必要がある。この時、馬に対して遠慮がちになる必要はない。馬自らが動けば、騎手は毎回馬に対して強い扶助で要求すること044JRA Dressage Training

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