JRA Dressage Training
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043騎乗時に最も多く使用されている補助具は、折り返し手綱ではないだろうか。馬場馬に限らず障害馬の準備運動などにも用いられているのをよく見かける。しかし、折り返し手綱は「馬の頭頸を丸める道具」として使用してはならない。折り返し手綱を短くして、「ハミ受け」をしない馬の頭頸を丸めようとするのは正しい使用法とは言えない。この手綱は、あくまで補助的に作用させるべきで、本来の手綱が主体となるべきである。折り返し手綱の正しい使用法は、「馬に限界点を認識させる」という考えのもとで使用しなければならない。騎手が決めた位置から、馬が頭頸を上げようとした場合にのみ折り返し手綱が作用して、これ以上は上げられないという限界点を馬に認識させるために使用する。それ以下の位置に頭頸がある間は、折り返し手綱は全く作用しない状態でなければならない。折り返し手綱を使用するライダーは、この考え方を持っていなければならない。また、頻繁に使用するのではなく、馬が限界点を理解すればもちろんのこと、本当に理解しているかどうかを試すためにも、折り返し手綱を外して運動する日が主体であることも認識すべきである。運動の応用の中に躍動感に溢れた速歩のイメージを持って乗らなければ、この感覚を養うことはできない。馬の要件①透過性を保った状態で速歩ができる②騎手の前進扶助に確実に反応する③中間速歩ができる収縮速歩の実施方法①馬体を丸くするために、ハミを受けた体勢をつくる。②ハミを受けた体勢で、推進を強める。 ・推進を強めたことによって馬がハミに強く出て抵抗した場合も、騎手が騎座と拳を連携させて抵抗を取り除き、馬体を丸くした状態を保つ。③・馬が前へ行こうとする力を、前へ行かせるのではなく後躯の中に溜める。そのために騎手の騎座を深く安定させ、馬のバランスを起こした状態で保ち、上に弾ませるように意識する。半減却の使用。④・馬が自ら体勢を丸くしようとしている状態をつくるために、騎手のコンタクトは一定に保ち、馬が抵抗を示していなければ軽いコンタクトで馬のセルフキャリッジを尊重して、騎手は力を抜いて馬の動きに同調する。⑤・前進意欲が不足していると判断できれば、脚で推進を促しつつ、①に戻る。前進意欲が強過ぎる場合は、騎座を強くして拳を使う割合を少なくし、決して拳で抑えようとしてはならない。⑥・速歩のテンポがゆっくりになったことを感じられれば、馬体にパワーが溜まってきていると考えられるので、最小の扶助とコンタクトにして動きを妨げないようにする。収縮を進めていくと、後躯をさらに活発に動かさなければならないため、要求する推進も強くなる。そうなると、馬はハミに対して強く前へ出て行こうとするが、騎座という柱を強く保ち、拳のみで抑え込んでしまわないようにしなければならない。ラウンドした体勢はあくまで馬が自ら維持する必要があり、そのためには騎手は一時的に力を使って抑えることはあっても、それを恒常的に使うことがないようにする。そうしなければ、四六時中拳を強く使い続けて馬の体勢を保たなければならない馬になってしまう。私は上記の①から⑥までの作業を通して、騎座の安定に最も気を配るようにしている。安定したリズムは、安定した騎座とコンタクトから生まれるものである。また、収縮を求める際は騎座とウエイトを意識的にやや後ろに位置させ、馬の重心を後ろへ戻すようにして前躯を軽くし、肩がスイングしてくることをイメージしている。これらの一連の作業は後にパッサージュへと繋がるため、馬の能力によってはパッサージュ歩様を示すことがある。その動きは、弾発が出てきた証でもあるため、上へ浮く力を前進気勢に変えながら、速歩に表現力を与える。折り返し手綱の使い方

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