JRA Dressage Training
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◆ケース2ハミへの抵抗が極端に強く、一向に譲る傾向にない馬036JRA Dressage Trainingこのような馬は、概して先に記した調教補助具による後遺症であることが多い。私はここで調教補助具の使用を禁じているのではなく、正しい使用法に則って使うべきで、補助具に依存する傾向になることに警鐘を鳴らしたい。私はこれまで、前述した対処法でも絶対に譲らないという馬に何頭も出会ってきた。しかし、その馬たちは1日や2日では反応はないものの、数日繰り返すことにより良化することが多かった。とりわけ抵抗の強い馬に対し、前述した対処法以外に特効薬的な方法があると紹介したいところだが、残念ながら私にはその知識も経験もない。私がここで言えることは、さらに強い扶助で馬が反応するまで忍耐を持って継続し、馬が納得するまで実施するということである。ここで用いる「強い扶助」とは、単純に「力」(ハミへの強いプレッシャー)も必要になるということである。“馬術は力ではない”と言われるが、このような馬を矯正するには、「力」を使わずして馬を正しい方向へ導くことはできないように思う。ただし、この「力」とは馬がハミに反抗して頭頸を上げている間にだけ使用するもので、その間に少しでも譲る傾向があれば、プレッシャーを緩めるべきである。この明確な「力」の強弱が重要で、馬がハミを押し出そうとすれば騎手の「力」によって苦しくなることを感じ、少しでも譲ればその「力」から解放されて楽になることを理解する。これを繰り返すことにより、騎手が使う「力」は段階的に「更に小さい力」になり、最終的に“馬術は力ではない”と言えるようになるのだろう。「力」は最初のきっかけだけであり、段階的に弱くならなければ馬は何を要求されているか理解できず、これまでにないような反抗を示すことになるだろう。「力」という言葉が先行してしまったが、ハミへ「力」でプレッシャーを掛け続ける方法だけでなく、こちらから先に拳を譲ることによって馬の譲りを得る方法もある。これは、「拳を使ったり譲ったり」を繰り返し、拳の使用を止めて譲った時に、頭頸を下方へ伸展させる方法である。コンタクトをなくすのではなく、コンタクトを保った状態の中で拳の握りを少し緩めて馬の反応を試すものである。これには特に名称はないが、私は「ハミへの逆譲り」と呼んでいる。例えば、馬が頭を上げてハミに抵抗している場合、外方手綱に支点を置きながら内方手綱で頭頸を内側に向ける。馬が抵抗していたとしても、一時的に力を使って向ける。しかし、馬が一向に譲る気配がなければ、こちらは妥協するわけではなく、一つの駆け引きとして、支点となっている外方手綱のコンタクトの強さは変えずに内方の「拳を使ったり譲ったり」して馬の反応を見る。力を小刻みに使ったり譲ったりするのではなく、ある程度の時間力を使ってハミへプレッシャーを掛ける。その後、馬がその力に屈しないで逆に反抗するようであれば、その反抗をする前に力を抜き、拳を譲る。その瞬間、馬もその手綱の譲りに釣られるように頭頸を下方に伸展する場合がある。それを利用しながら「拳を使ったり譲ったり」を繰り返して、馬よりも優位に立ちながら、衝突し合うことなく運動を進めることができる。このように、基本的には馬のハミ抵抗に対しては強制力を持った「力」で対抗するが、その「力」だけで修

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