033運動の基本外方脚で受けて、内方姿勢を維持する。⑤・コンタクトをやや緩めることによって、馬が伸展することを選択しようとすれば、コンタクトはある程度保ちながら、頭頸が伸展する分だけ手綱を長くする。しかし、バランスまでもが前方へ移ってしまうような伸展をした場合は、もう一度手綱を控えてバランスバックする。これら一連の動作は、馬が従順に頭頸を伸展したときの扶助である。正しくトレーニングされている馬は、常にこの「頭頸の伸展」を自ら行おうとする。どのような用途の馬であっても、馬は緊張から解放され、リラックスした状態での準備運動が必要になる。私は、この緊張の緩和が得られなければ次のステージには上がらず、馬との正しい関係(馬が騎手を信頼してリラックスできる関係)を築くことが最重要事項と認識している。頭頸を伸展しない馬の原因は、主に2通りあると言っていい。一つは、騎手が正しい扶助を出していないためである。もう一つは、調教補助具(折り返し手綱・サイドレーンなど)の誤った使用法による悪影響である。調教補助具は、正しく使用すれば効果的に作用するが、誤って使用すると、人間の力をはるかに超えた力が補助具を通して馬に掛かることになる。そのため、その調教補助具を外したときに、人間の腕力では抑えられない力でハミに反抗された場合、対応できなくなる。私はこのような馬を再調教する場合、敢えて調教補助具を外し、人間の力だけでやり直すことにしている。人間の力は、調教補助具以上に固定したり強力に働き掛けたりすることはできないが、馬が良い兆しを見せたときには「譲る」ことができ、「褒める」ことができる。馬はそれらを待っていて、どれが良いのか、どうすれば楽になるのかを知りたがっている。我々は、お互いが楽に調和できる方向性を導く役割を果たさなければならない。頭頸の伸展を行う上での注意点私は、頭頸の伸展によってバランスが前へ崩れないようにするために、頭頸を下方へ伸ばし過ぎないようにしている。頭頸の伸展は重心まで前方に移動してしまわないようにすべきで、バランスが前方に崩れることによって馬の肩への負担も大きくなると同時に、後躯が活発に動かないため、本来の目的から乖離してしまうことになるからである。頭頸を伸展して背中の筋肉を柔軟にし、後肢の踏み込みを促すことを意識しながら実施する必要がある。準備運動後の流れこれらの運動により、頭頸を伸展させて背の緊張を解し、馬が心身共にリラックスして来ると準備運動は終了となる。次に、コンタクトを取って頭頸の位置を上げ、馬自身でバランスを保っている状態で運動する。そして輪線の図形から直線の運動に移る。このとき直線運動であっても、馬体全てを直線上に乗せるのではなく、常に僅かな内方姿勢をとって屈曲させておく。内方姿勢は、全ての運動の基礎をなすものであると私は考える。騎手が馬を操る際に、常に内方姿勢を作って内側と外側を意識し、扶助操作もその上で行うことが必要である。内方姿勢とは、馬を正しく内方に屈曲させることである。ただし、単純に馬の鼻先だけが内側に捻れているのは内方姿勢ではなく、項から後躯までが輪線に沿った体勢を言う。例えば、20mの輪乗りの輪線に沿って馬体がしなやかに屈曲している状態が内方姿勢と言われるもので、肩や腰なども同じ輪線に沿っていて、どの部分も外や内にはみ出てはならない。これが、私が考える「狭義の内方姿勢」である。この「狭義の内方姿勢」は、手綱を持って馬とコンタクトを持ち始めるとすぐに必要であり、そして輪線上の運動をしている限りは内方姿勢を維持し続けなければならない。内方姿勢はあらゆる場面において、例えば、巻き乗り、隅角通過、「肩を内へ」、ハーフパス、ピルーエットなどで、騎手が常に意識している必要がある。そのためには、いつでも内方姿勢がとれることを確認しなければならない。これに対して、私が考える「広義の内方姿勢」とは、6.内方姿勢
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