031◎バランスを起こす方法と騎手の感覚a 前方にバランスが崩れた馬の体勢馬は前へバランスを崩し、頭頸の最高点は項ではなく第二頸椎以降になり、崩れたバランスを騎手が拳で支えている。後躯から生み出された推進力は馬体に溜まることなく、ピッチが速くなることに変わってしまう。b 馬がバランスを保っている体勢頭頸を肩の上に乗せて馬が自らバランスを起こし、鼻梁のラインは垂直を保っている。騎手はコンタクトを軽く維持し、安定した騎座でこの関係を保つ。騎座からトップに位置する項(第一頸椎)へ向けて矢印が伸び、そこからハミへと繋がっている。 しかし、aの体勢になってしまった馬を矯正する際には、後躯の力が項をトップポイントとして、そこからハミに向かってではなく、更に前上方へ抜けて行くイメージ(黄色矢印)を持ってバランスを起こすようにする。運動の基本ハミ受けが安定すると、頭頸をどこの位置に定めてトレーニングするかという問題が出てくる。頭頸のポジションは、バランスの起きたアップヒル(Uphill丘を登る)のポジションと、LDR(Low・Deep・Round コラム「LDRのポジション」参照85ページ)のポジション、更に屈曲を求めるハイパーフレクション(Hyper・Flexion究極の屈曲)など様々である。アップヒルのポジションとは、項を頂点とし、ハミを受けて下顎を譲り、鼻梁のラインが地面に対してほぼ垂直にある体勢のことをいう。LDRのポジションとは、アップヒルのポジションでとる下顎の譲りのまま、頸の付け根(き甲)の関節から下方へ屈曲させる体勢である。ハイパーフレクションとは、LDRのポジションからさらに下顎を譲らせて前後左右に屈曲を過度に求めることをいう。ドイツのクラシックなトレーニングは、ウォームアップで頭頸を伸展し、その後はアップヒルのポジションに安定させて全ての運動を行うことを基本としている。この流れが基本であり理想であるが、その域に到達するために様々なアプローチの方法を持っておく必要がある。例えば、常に頭頸の位置が上がり、背に緊張をもたらす馬の場合は、やや低い位置に頭頸を位置させて全ての運動を行うことができるようにする。ただし、頭頸を低く位置させたとしても、バランスは前のめりにならないようにしなければならない。その体勢を基本としながら、馬が納得していれば、競技会と同じアップヒルのポジションにして運動する時間を設ける。そして、再び緊張が表れてくる前に低い位置に戻す。これらを繰り返し、頭頸が上がらないようにして競技に備える。反対に、頭頸の位置を低くしようとする馬の場合は、常にアップヒルのポジションに位置して運動する。バランスを起こした体勢をベースにして、バランスが前へ行くような体勢を極力とらないようにする。ハミ受けを犠牲にしてでも、バランスを起こすことを最優先させることが必要である。このように、頭頸の位置が低くなり過ぎるのであれば高い位置に、高くなり過ぎるのであれば低い位置に保ち、頭頸をどの位置に定めるべきか
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