JRA Dressage Training
31/116

029半減却の調教方法半減却の扶助は、上記の事項を行うことで実施できる。しかし、調教をされていない馬の場合は、移行を頻繁に繰り返すことによって半減却を確立していく。①20mの輪線運動をする②速歩から常歩へ移行する③・輪乗りの中でポイントを1箇所決め、そのポイントに近づくにつれ、座骨を起こして鞍にしっかり座り、騎座と連結させながら拳を控え、速歩の歩幅を縮める④・半減却を使って速歩から常歩へと移行し、リラックスした常歩をした後、直ちに速歩へ移行する⑤・決まったポイントで速歩から常歩への移行を何度も繰り返すことによって、馬がポイント前で自分から歩度を詰めて次の準備をしようとする⑥・馬が自分から歩度を詰めようとすること自体が半減却であり、その反応が出てきた場合はよく褒めて休憩する時間を設ける⑦・・「速歩⇔常歩」の移行時に、頭頸の位置が上がったり、ハミに反抗したりすることがないようにし、もしそうなれば再び速歩に戻して体勢を整え、再度やり直す透過性とは、馬の後躯からの推進力が馬体の中を真直ぐ前に向かって通っている状態で、言い換えれば、推進力が「後躯→背中→頸→項→ハミ」まで到達していていることをいう。透過性は、馬術を行う上で絶対的に必要な要素である。透過性を欠き、頭頸を上げてハミに抵抗を示していると、背が反った体勢になる。この体勢になると馬の背中を痛めるだけでなく、収縮に繋がっていくことはない。馬自身が体勢を丸くして運動することは馬術の基本であり、この基盤となる体勢が確立していなければ、馬はこの先のどんな調教も習得することはできない。騎手が馬に負担をかけずに乗るためには、頭頸の伸展、下顎の譲り、後肢の踏み込みにより馬のトップラインを丸くし、背中に人が乗っても痛めない体勢にする必要がある。運動の基本手と繋がった「ハミ受け」が必要になる。「ハミ受け」の考え方としてイメージしておくことは、静定された拳を馬が頼り、馬が納得してその場所にいるという環境をつくることである。馬が納得するとは、ハミを受けて丸くなった体勢を馬自身が維持することであり、騎手が拳を強く使って馬の体勢を無理に作り、抑え付けて維持することではないということである。騎手は、常に透過性を得た体勢で馬を動かさなければならないし、調教を進めるためには絶対に必要になる体勢として、透過性が全ての基礎であることを認識していなければならない。また、透過性を持った体勢で運動することによって、正しい筋肉が付いて理想的な体型になることができる。では、透過性を伴った体勢を確立するためには、どうすればよいか、また、問題のある馬に対してどのように対処すべきかを考えてみたい。透過性を得た体勢にするには、ハミと手綱を通して騎例えば、馬が頭を上げてハミに抵抗したとする。私はこの時、抵抗している馬に対して拳を強く控えて対抗するが、必ず拳と騎座を連結させて使うようにしている。これは、拳だけで馬に対抗しようとしても到底敵わないため、騎座という太い柱を馬の背中に立てて拳を使用し、同時に騎座で推進しながら馬が譲るのを待つことにしている。馬が頭を上げようとすると、騎手の「拳と騎座」(扶助の関連)の抵抗によりハミに強く当たる。その後、騎手によって強く抵抗されたハミから逃れる先として馬が下方を選べば、騎手は抵抗を緩めて馬のその行動を尊重する。騎手は常にコンタクトを持ち、その強さは馬がハミに抵抗している間は対抗するように強くし、下方や側方への譲りがあればその報酬としてコンタクトを緩めるようにする。これを繰り返し、馬がどこにいれば心地よいかを学習し、馬自身が納得して透過性を得た体勢で動くことを浸透させる。騎手が一方的に強い扶助を使い続けても馬は反抗するだけで、騎手の扶助に従順にはならないだろう。性格によっては騎手の強い扶助に屈する馬もいるが、反対にそれに抵抗を続ける馬の方が多いと透過性を得た体勢に至るまで4.透過性

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る