JRA Dressage Training
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真直性とバランスどんな馬にも歪みがある。しかし、運動中の馬体は真直ぐでなければ、後躯から生まれた力をハミまで通すことはできない。逆説的な表現ではあるが、馬体を真直ぐするために、屈曲を多用しながら調教する。馬の歪みが発生する部位は、項、頸、肩、腰などが挙げられる。それぞれの部位は、馬が勝手に位置しているのではなく、騎手の意思によってコントロールされなければならない。そのため、「肩を内へ」、「腰を内へ」、ハーフパスなどで馬の屈曲を自由に操ることによって、最終的に真直性を作り出すことができる。馬の姿勢を自由に操り、真直性を確立して透過性を得た運動ができるようになると、次に馬のバランスを求めていく。バランスは、競技会でのアップヒルのポジションの確立を目標とする。しかし、トレーニングにおいては、頭頸を上げやすい馬には低い位置に、低くなりやすい馬には高く保つなど、馬は従順に、かつ柔軟に騎手の求めるバランスに対応できなければならない。収縮収縮(コレクション)は、馬場馬術や障害馬術を問わず、馬術の最終目的である。調教の段階を正しく踏んでくると、収縮への道が開かれる。馬が収縮してくると項を頂点とした体勢に近づき、後肢の馬体下への進出と後躯の沈下が見られ、後躯から力強い推進力が生まれる。馬は、自ら収縮を維持しながら前進気勢を持ち続け、前躯が起揚する(関係起揚)。ベーシックペース馬場馬術用馬に求められる最も大切なことは、ペースが一定で前進気勢に満ち溢れていることであり、そのベースになる動き(常歩、速歩、駈歩におけるクオリティ)には、透過性から生み出されたリズム、弾発、収縮などが備わっていなければならないことを認識する必要がある。我々は、そのベースの動きを7点以上のクオリティに導く役割を担っている。このベースの動きが7点のクオリティでなければ、どんなに美しい体勢でハーフパスを実施したとしても、6点をもらえるのが限度かもしれない。024JRA Dressage Training審判員は、常に総合的な観点から判断して点を付けるので、騎手はこのベーシックペースを常に意識し、7点以上のものを生み出すようにしなければならない。「ハミ受け」とは、馬がハミの作用を受け入れ、騎手の指示を受け入れる体勢になっている状態をいう。馬は、ハミに対して抵抗することなくリラックスして受け入れ、騎手が出す扶助に従える精神状態でなければならない。「ハミ受け」ができている状態では、馬は下顎を譲って頭頸はきれいなアーチを描き、馬体全体が丸くなる。それにより背も丸くなり、騎手を乗せても背を痛めることが少ない。逆に、ハミ受けを嫌い、頭頸を上げてトップラインが丸くならない体勢は、背を反ったまま騎手を乗せて運動することとなり、馬の背を痛める原因になる。「ハミ受け」の目的と効果①騎手の要求を受け入れやすい馬の体勢を作る②トップラインを丸くすることによって、背の柔軟や後肢の進出を図る③人馬間で半減却が通る関係を築き、収縮を目指す④騎手が自由自在に馬をコントロールする2.「ハミ受け」とその効果

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