019◎拳を下げて乗る①拳を起こした姿勢②拳を伏せた姿勢騎手の基本姿勢ばしばある。もちろんこの方法で、馬は口を譲って体勢が丸くなることがある。しかし、本質的には、馬は納得してその体勢になっているわけではない。しきりに動かされた拳によって、馬は考える暇も与えられずにその体勢を強いられていると言える。この場合、馬が自分で考え、納得して正しいポジションにいる訳ではないため、馬が自らその体勢を維持しようとすることは決してない。よって、その正しいように見える体勢を維持するために、騎手は常に拳を動かし続けなければならなくなってしまう。一方、拳を静定した場合は、馬に考える時間が生まれる。馬がハミから逃げようと頭を上げると、拳(ハミ)に当たる。そこから馬が譲ると、拳の抵抗から解放される。馬は譲ると楽になることを学び、自分がどこにいれば心地よいのかを理解する。馬自身が考えてそこにいようとする環境を騎手が作ることによって、一定のハミ受けが生まれる。そして、馬の口とのコンタクトは常に軽く保っているべきで、手綱が張り過ぎたり緩み過ぎたりしてはならない。騎手が求める位置で頭頸が安定したときにはコンタクトを軽くして、その場所を馬にとって快適なものにすることによって、その体勢を馬自身が維持するように仕向ける必要がある。そうして、騎手の拳の役割は、馬の納得度に反比例して、少なくなっていくことが理想である。拳の扶助には、「拳の単独使用」と「拳と騎座との連結使用」に分けられる。「拳の単独使用」とは、単純に拳のみを動かしてハミを使って馬に指示を出す扶助のことをいう。姿勢の変換、内方姿勢、僅かな屈曲を求めるときなど、馬に強く作用を求めない場合に使うことが多い。開き手綱、押し手綱、拳の握りの強弱によって、騎手が求める体勢にする。「拳と騎座との連結使用」とは、騎座と連結させながら拳を使用する扶助のことをいう。主に半減却を求める際に必要な扶助で、馬の体勢やバランスの改善、ハミ受けの矯正、収縮など馬に強く作用を求める場合に使うことが多い。脚で促した前進気勢を馬体に溜めるために、騎座と関連付けながら拳を控えて半減却を行う。違いを考えたい。「拳を起こした姿勢」は、肘・拳・馬の口が一直線になり、脇が閉まることによって拳が騎座と連結しやすい体勢になる。馬に対して瞬時に拳と騎座の連結した扶助が出せるため、馬がハミへ抵抗したりバランスを前へこのように、馬の背の上では拳と騎座を連結させて使用することが多いが、常に馬に強いプレッシャーを掛け続けるのではなく、「拳の単独使用」と組み合わせて運動することが必要である。次に、「拳を起こした姿勢」と「拳を伏せた姿勢」の拳の扶助
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