016JRA Dressage Training騎手の脚については、基本姿勢の中でどのように活用できるか、また脚扶助はどのように使用して馬を動かすべきかを説明する。脚は、騎手が馬に前進気勢を与えることができる最も重要な扶助である。私はドイツで研修を受けるまでは、脚の扶助をできるだけ強く、継続的に使うようにと言われてきた。脚は、馬の動きの1歩ずつに使うものとまで認識していた。しかし、現在はできるだけ脚扶助を使用しないように心掛けている。まったく逆の考え方であるが、私は「馬が騎手の脚扶助に敏感である関係」の確立・が、騎手にも馬にも良い方向性を見出せる方法であると考えるからである。例えば、騎手が使う脚扶助に対して反応が鈍く重たい馬には、どのように対処すべきかを考えてみたい。このような場合も、馬の一歩ずつに脚を使い続けるのではない。もし、脚を常に使い続ければ、馬はその脚扶助に慣れ、騎手は更に強い刺激を必要として効果の大きい拍車などに頼らざるを得なくなってしまう。一方、脚扶助を極力使用しないためには、脚扶助は騎手と馬との間の扶助で最も重要な扶助であることを、最初に人馬共に理解することが必要である。一度騎手が脚扶助を馬に使用した場合、馬はそれに対して直ちに何らかの反応(前進)を示さなければならない。例えば、脚を圧迫して前進の扶助を与えたのに対し、馬がそれを無視した場合は、もっと強い脚扶助もしくは鞭などで懲戒してペナルティを与えなければならない。それにより、次に脚扶助を使用した場合に、馬はすばやく何らかの反応(前進)を示すようになる。なぜなら、前へ自ら動かなければペナルティが待っていることを馬が理解するからだ。次に脚を使い、馬が前に飛び出そうとするのであれば、それを尊重すべきで、手綱などを引いて阻害してはならない。騎手は前に行こうとする馬に同調し、騎手の扶助に反応したことを褒める(愛撫する)べきである。脚扶助の使用原則脚扶助→反応(前進)→報酬(同調・愛撫)という流れの中で、馬の前進意欲をより一層掻き立て、その意欲を尊重できる騎手にならなければならない。ただひたすら脚を使い続けていては、馬は脚扶助に対して益々鈍感になり、さらに強い扶助を使わなければ次の反応を得られなくなってしまう。また、鞭の使用法にも同じことが言える。鞭は騎手が馬上で使える最後の手段である。鞭の使用も脚の使用と同様に、鞭扶助の使用原則鞭扶助→反応(前進)→報酬(同調・愛撫)の流れで使用する。しかし、どんなことがあっても、鞭の濫用は絶対に避けなければならない。脚を使い過ぎないメリット・馬の歩調(リズム)を保ちやすい・馬の反応をフレッシュのまま維持できる・人馬がリラックスでき、体力をセーブできるなどが挙げられる。また、脚を使い続ける扶助のデメリットはこれらの逆となる。「踵が下がらない」という問題も改善しなければならない。踵が上がる原因は、馬を前進させるために踵を中心に使用していることが挙げられる。脚扶助はふくらはぎから使用するもので、踵を下げている体勢が必要になる。そのため、太腿の内側をリラックスさせ、太腿と脚の重さを自然に鐙に掛けて踵が下がるようにする。踵を下げようとして、足首の関節を固めてしまうことは、馬の反撞を身体で吸収できずに逆効果になることもあるので注意してもらいたい。踵を下げてリラックスした下半身を確立するためには、脚扶助を犠牲にしてトレーニングすることも必要である。脚の使い方踵を下げて乗る2.脚について
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