JRA Dressage Training
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013推進時のライン(僅かに後傾)騎手の基本姿勢ニュートラルラインり、馬の背中の動きを妨げない騎座ができると考えられる。膝より下は力を抜き、ふくらはぎの内側(内側の少し前側)を、馬体を圧迫しない程度に常に密着させておく。踵は、足首の力を抜いた状態で自然に下がり、重心の真下に位置させる。下がり過ぎると足首が硬くなり、正しい扶助操作を取りにくくなる。踵やくるぶしは、強い扶助を与えるとき以外は馬体から離しておかなければならない。「深く座るためには、騎座を強く押し付けない」と言うと、やや逆説的に聞こえるが、そうではない。リラックスできて初めて、軽く座れる安定した深い騎座が生まれる。騎座は騎手の扶助の要となるもので、騎手の意識によって様々な使い方ができる。騎座は時に推進にもなり、時にブレーキにもなる。どのケースでどのように使い分けるのかをまとめてみた。推進になる騎座推進の騎座の説明の前に、本来の騎座とはどうあるべきかを考えてみたい。私は、騎座とは、動いている馬の背の上ではニュートラルの状態にあるべきと考える。ニュートラルとはギアが入っていない状態で、馬の動きに同調して乗っていることを意味する。馬の背中の動きを妨げないように骨盤を垂直に構え、馬の反撞に影響されることなく静かに座っている状態である。つまり、通常はアクセルもブレーキも影響していない状態にあるため、騎手が騎座に推進や半減却の変化を付けると、馬はそれを理解して受け入れることができる。①推進の騎座の使い方推進の騎座とは、より積極的に同調して馬の前進意欲を高めることである。上体をやや起こして騎手の上半身の体重を馬の背にしっかり掛け、騎座を強く前下方に押し込みながら、同調を強くしてギアを入れる。騎座を使った直後に脚を使い、馬を前進させることを数度繰り返して、騎座が前下方に押し込まれると前進する、という反応を教え込む。その騎座の動きに対して馬が「より前進する合図」と反応した場合は、直ちに骨盤を垂直に戻してニュートラルの状態にし、動いている馬の妨げにならないようにすることを忘れてはならない。そうしなければ、常に馬上で押し続ける騎座になり、それが続けば馬の背中は鈍感になって、次に扶助を出す場合には、それ以上の強い騎座の推進が必要になってしまうので注意が必要である。②半減却の騎座の使い方全ての運動において必要不可欠な半減却の騎座を機能させるためには、その効果を意識しながら使用しなければならない。半減却の騎座の使い方は、馬の動きに同調しつつも、馬の動きを待たせるように、つまり馬のテンポを遅らせるように騎座をやや重くする。同時に騎手は、上半身を起こしたままにして、前進気勢を後躯に溜めるイメージを持ちながら騎乗する。もちろんこの時、騎座だけでなく拳と脚(推進)を連結して使用しなければならない。また、半減却を行うには、その前提として馬が丸くなっていることを確認しておかなければならない。私は、この半減却の騎座を騎乗中のあらゆる場面で使用し、収縮に繋げて行く。また、弾発を持った速歩を要求する際にも、この騎座が必要になる。(「半減却」の欄を参照27ページ)騎座の効果とその使い方

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