JRA Dressage Training
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パッサージュをするためには、速歩の空間期に間(ま)が必要である。馬場馬術用馬としての血統を持つエリート馬は、生まれつきそのような速歩の歩様であることが多い。では、エリート馬だけがグランプリホースになるかといえばそうとも言えない。過去には、サラブレッドもグランプリ馬として活躍していた実績がある。どんなに経験のあるライダーが正しくトレーニングを積んでも、パッサージュに至らないエリート馬もいれば、サラブレッドや日本産の乗用馬の中にもパッサージュを習得する馬がいるから不思議である。また、パッサージュは非常に質が高いがピアッフェは不得意であったり、パッサージュはできないがピアッフェは得意というような馬もいる。私はどちらのパターンも経験してきたが、やはり修正は難しかった。私の経験では、腰部が柔軟で後躯の力が強い馬は、後肢が馬体下に進出しやすい。また、ピルーエットで後躯が沈下する馬は、ピアッフェでも良い体勢でステップを踏むことが多い。しかし、後肢の踏み込む力があっても、1歩のステップが大きい馬は、ピアッフェの小刻みな動きに対応しにくい場合があるのも事実である。◦調教日誌◦この馬のピアッフェの調教は、徒歩作業から始まった。その後、騎乗して徒歩作業で覚えたステップへと扶助を繋げて、リズムよく実施できるようになった。しかし、競技会を経験するうちに、ピアッフェへの意欲が減退してしまい、トレーニングと競技本番での差が生じてしまっている。◦調教日誌◦この馬は、腰部が柔軟で後躯がよく沈下した体勢をとることができた。しかし、徒歩作業では後肢が馬体下へ進出し過ぎてしまい、ステップが踏めない状態になってしまった。そのため、パッサージュを実施しながらそのステップを少しずつ詰めてピアッフェになるように調教を進めることにした。098JRA Dressage Trainingピアッフェやパッサージュができる馬はどんな馬かホワイミー号トレジャーハント号

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