騎手に迫る若きリーディングジョッキー

騎手は自分次第で大きなチャンスのある、魅力的な世界です

浜中 俊 騎手Suguru Hamanaka

1988年生まれ。福岡県出身。競馬学校を第23期生として卒業後、2007年にデビュー。初年度に20勝をあげると、2年目の2008年には73勝と大きく勝ち星を伸ばし、同年夏にデグラーティアの小倉2歳Sで重賞初制覇。3年目の2009年にはスリーロールスの菊花賞でGI 初制覇と、またたく間に関西トップジョッキーの仲間入りを果たす。6年目の2012年には131勝をあげ、24歳の若さで全国リーディングを獲得。以降もリーディング上位の常連として活躍中。

  • 乗馬の前にもいろいろな習いごとをしていた

    僕が小倉競馬場の乗馬苑で乗馬を始めたのは小学5年生のときですが、習いごとはそれまでにもいろいろしていました。水泳もやったし、そろばんも習っていましたし。いちばん長かったのが空手で、小学2年生くらいから中学卒業までずっとやっていました。

    騎手になりたいと思ったのは小学2年生の時です。サクラローレルが勝った有馬記念(1996年)を、祖父の家でテレビで見ていて、かっこいいなと思ったんです。空手を始めたのも、将来騎手になるために体と心を鍛えた方がいいから、という考えです。じつは英会話も習ったことがあって、これも、騎手は世界中で戦うものだから将来必要になる、と子どもなりに思ったからです。まあアタマが追いつかなくて続きませんでしたけど(笑)。

  • 柔軟性と気持ちの強さを養っておくことが必要

    騎手になるために、子どもの頃にこういうスポーツをやっておいた方がいいというのは、特にはないと思います。ただ柔軟性、体の柔らかさは継続してやらないとなかなか身に付かないので、意識しておくといいですね。

    体の柔らかさは、ケガを防ぐためにも、また、技術を向上させていくためにも必要だと思います。筋肉は馬に乗っていればある程度は鍛えられますし、後からトレーニングで補うこともできますけど、柔軟性はそうはいかないですから。

    あとは気持ちの強さですね。僕の場合は、空手をやっていたことがすごくよかったのかなと思います。当時教わった、気持ちを落ち着かせて集中する呼吸法みたいなものは、じつは今でもレース前に行っています。まあ半分“おまじない”みたいなものですけど、でもそんなふうに実際に役立っていますからね。

  • 初勝利は遅かったが、夏の小倉がきっかけで勝ち星を増やす

    僕は、競馬学校での実技の成績は良い方だったんですが、いざデビューしてからは初勝利まで1か月くらいかかってしまったんです。でも師匠の坂口正大先生が、焦らなくていいって言ってくださって、それで自分のペースを崩さずに乗り続けることができました。

    勝てるようになってきたのは、その年の夏の小倉開催からです。地元なのではりきっていたこともあって、7月と8月の小倉で5勝できたんです。そこまでは2勝だったんですが、これがきっかけでレースが楽しくなってリズムもできてきました。それが9月以降で13勝できたことにつながったんだと思います。

    先輩たちの技術を見て盗むことは、最初から意識していました。経験豊富な方たちと話すと、それまで思ってもいなかったようなことを言われて、それがヒントになったりすることがありますね。僕の場合は、特に岩田康誠さんのフィーリングがすごく合う気がして、いろいろと教えていただきました。

  • 先輩の岩田康誠騎手に教わったこと

    岩田さんに教えていただくようになったのは3年目の夏からです。その年、夏の小倉で落馬をして、競馬がちょっと怖くなっていたときに声をかけてもらったのがきっかけです。

    教わったことでよく覚えているのは、無駄な動きをしなければそれが直線の伸びにつながる、というものです。ただ、最初は自分ではじっとしているつもりでも、できていないって言われて、何が違うんだろうと。それがスリーロールスで野分特別というレースを勝ったときに「それや!」って言われて、この感覚かってわかったんです。スリーロールスが次走で菊花賞を勝てたのも、あれが大きかったと思います。

    スリーロールスはその年の有馬記念のレース中に、引退しなければならないほどのケガをして、競走中止になってしまいました。あのときは泣いてしまうくらいショックでしたけど、でもあれで僕も、馬は生き物なんだということを肌で学ぶことができた気がします。

  • お金が入ってきて、それでダメになるかどうかも自己責任

    騎手は、うまくいけば若くてもすごく稼げる仕事です。最初はたいてい所属の調教師さんか両親がお金の管理をしてくれますが、それでも見たことのないようなお金が入ってきます。でも、これは僕の個人的な考えですけど、それで金銭感覚が一般的なところから離れてしまっても、ある程度まではいいんじゃないかと思うんです。

    良い車に乗りたいとか、良い服を着たいというのは活躍するためのモチベーションになります。騎手は「魅せる」職業ですから、憧れられる存在になりたいという気持ちが大事だと思います。もちろんお金が入って、遊んでしまって伸び悩む人もいると思いますが、それも含めて、自己責任の世界なんです。成績が上がるも下がるも自己責任。それでダメになるのもならないのも、やっぱり自己責任なんです。

    騎手は、あくまで自分次第、自己責任ですが、それでも大きく稼げるチャンスのある、魅力的な世界です。これから騎手になろうという方にも、いっぱい勝って、稼いで、かっこよくなることをめざそう、と声をかけたいですね。

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