騎手になるには馬術競技のスペシャリスト

努力やセンスがあれば、乗馬経験の長い課程生に3年間で追いつき、追い越す例はある!

西脇 文泰競馬学校教官

1986年生まれ、岐阜県出身。中学1年生で乗馬を始め、国体出場など、活躍した後に明治大学馬術部へ。在学中は全日本インカレ団体4連覇、4年生時には主将も務めた。卒業後はJRAへ。馬事公苑で腕を磨き、3年目に馬場馬術競技で全日本内国産馬選手権優勝、翌年には総合馬術のワンスタークラスで優勝。2013年より競馬学校教官となる。

  • 馬場馬術の技術を競馬に生かす

    私は競馬学校の教官になる前、ずっと馬術競技の世界で選手として腕を磨いてきました。競馬や障害と違い、馬場馬術はどれだけ馬をコントロールできているかを競うという競技で私はそれが得意でした。

    もちろん私が競馬学校で教えているのは、馬場馬術そのものではありません。しかし速く走ったり高く跳んだりする以前に、馬に乗ることの基本は馬術から始まります。トレーニング・センターの調教でも、馬が調教に出ている2時間のうちの1時間半は鐙(あぶみ)を長くして乗っている時間で、その間の乗り方ひとつで、馬の仕上がり、馬のコントロールのやり方は大きく変わってきます。

    また、例えば騎手を引退した後、馬に関わる仕事につく場合にも、こうした技術は重要な引き出しになっていきます。実際、騎手としてデビューした後、あらためて馬術のトレーニングを再開する騎手もいます。

  • 乗馬経験のない課程生でもきちんと指導するので大丈夫

    これまでも乗馬経験がないまま競馬学校に入ってくる課程生はいましたが、今後はより一層、そうした受験者が増えて欲しいと思っています。乗馬経験がないとどうしても気後れしてしまうでしょうが、入ってからきちんと指導するので安心してください。

    乗馬経験はあるに越したことはないのですが、未経験者は未経験者なりに、変なクセがついていなかったり、こちらの言うことをすべて吸収してくれたりと、良い面もたくさんあります。実際、努力やセンスがあれば、乗馬経験の長い課程生に3年間で追いつき、追い越す例をたくさん見ています。

    いずれにせよ、競馬の現場で騎手として必要な馬をコントロールする要素は3年間で身に付けられます。心配せずにチャレンジしてみて欲しいですね。

  • 競馬学校の生活で大切なこと

    競馬学校は全寮制で、3年間、長い休みもありません。厳しいようですけど、でも例えば私も所属していた大学の馬術部などに比べれば、楽だと思いますよ(笑)。大学の体育会系は、先輩後輩の関係なども含めて厳しいですからね。相手は馬という生き物ですから、私も4年間、大学の授業があるとき以外は毎日休みなしで馬の世話をしていましたし。

    指導する上で大切にしているのはまさにそこで、相手は生き物なんだから、馬に対して感情的にならないように、ということです。例えば馬を叱ることは必要ですが、例えば顔や目の周りを叩いたりすると、それが原因で怖がりな馬になってしまったりします。そういうことを常に考えながら馬に接することを教えています。

    技術的な面で重視しているのは、教えている技術が「馬術のための馬術」にならないようにすることです。目的は、馬を走路で走らせ、競馬を行うということですから。だから基本段階での指導では、このことは走路で全力で馬を走らせるときには、こういうケースで役に立つよ、ということを説明しながら行っています。課程生には、馬のコントロールの本質的なことを学んで欲しいと常に思っています。

  • 入学試験の際にどこを見ているのか

    入学試験には乗馬試験、面接、筆記試験、運動能力測定、集団生活での生活態度を見る、などがあります。これらの全てにおいて基準点を上回る必要があります。そして、これをクリアした者の中から合格者を選ぶ際には私は人間性を重視しています。

    競馬は、馬に乗せてもらえないと始まりません。人に可愛がられることが大切なんです。もちろん、乗せてもらえた際にチャンスを生かせるような勝負強さも大事です。こいつを乗せようと思われる人間になること。そのチャンスを生かせる集中力があること。そういう課程生の方が、単に技術がある者よりも後々、伸びていきますし、実際にデビューした後も結果が出ていると思います。

  • 乗馬未経験者は何をしておいたらいいのか?

    もし乗馬未経験者で、騎手に興味があるという人は、まずはどんな場でもいいのでいちど馬に乗ってみることをおすすめします。それが難しい環境だとしたら、まずは競馬を見に行って、騎手という仕事をイメージしてもらうといいでしょう。

    私の場合は特に競馬ではなく馬術出身だからかもしれませんが、こういうスポーツをやっておいた方がいいというのはないです。ただ、自分の体重の増減に対する感覚だけは養っておいた方がいいでしょうね。それはプロの騎手になるにあたって本当に重要ですから。

    競馬に詳しくなくても、ぜんぜん問題ないです。そういうのもきちんと教えていきますから。とにかく、意欲があって、少しでもやってみようかなと興味を持ったら、ぜひ試験にトライしてみてほしいですね。

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