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有力馬主、種牡馬紹介

馬主(有力馬主、種牡馬紹介)

  • エリザベス女王The Queen(Elizabeth Ⅱ)

    1926年4月21日生まれ。現在のイギリス女王。曽祖父はダイヤモンドジュビリーで1900年の英三冠を達成したほか、1909年にはミノルで英ダービーに優勝して、歴代国王の中で唯一在位中に英ダービーを制したエドワードⅦ世。父は英1000ギニー、英オークス、英セントレジャーを制したサンチャリオットを所有したジョージⅥ世。

    幼い頃から馬に乗り始めたというエリザベス女王はやがて競馬にも強い関心を持つようになり、1949年に馬主として初勝利。 障害レースに熱心だった母エリザベスとの共同所有馬だったモナヴィーンという障害馬で挙げたものだった。

    その後、1954年には父と母の名が冠せられたキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSをオリオールで優勝。イギリスクラシックはカロッツァで1957年英オークス、ポールモールで1958年英2000ギニー、ハイクレアで1974年英1000ギニー(G1)、ダンファームリンで1977年の英オークスと英セントレジャー(共にG1)と、4頭で計5勝を挙げており、残すはオリオールで2着(1953年)、カールトンハウスで3着(2011年)がある英ダービーのみとなっている。なお、英1000ギニーに加えて、仏オークス(G1・フランス)も勝ったハイクレアはディープインパクトの曾祖母にあたる。

    1954年、1957年とイギリスチャンピオンオーナーに2度輝いた女王は現在では25頭ほどの現役競走馬を所有。2013年にはロイヤルアスコット開催(イギリス王室主催)のゴールドカップをエスティメイト(アガ・カーンⅣ世から80歳の誕生日祝いとして提供された6頭のうちの1頭)で優勝して24年ぶりにG1を制覇。通常なら自ら手渡す優勝トロフィーを子息であるアンドルー王子から授与された場面は競馬史に残る名シーンとなった。ロイヤルスタッドで生産も行っており、たとえば2018年にベルモントゴールドカップ招待S(G2・アメリカ)を勝ったコールトゥマインドは自家生産馬。

  • カーリッド・アブデュラー殿下Prince Khalid Abdullah

    1937年にサウジアラビアで生まれる。現在のサウジアラビア国王のいとこ。不動産、金融、保険、メディアなどを幅広く手がける巨大企業であるマワリドグループを築き上げた。

    10代の頃にフランスのロンシャン競馬場で競馬を見て、いつの日か馬主になると決心したそうだが、事業経営に忙しく、実際に馬主になったのは1977年。その2年後の5月にイギリスで馬主として初勝利を挙げ、同年10月にはミドルパークSをノウンファクトで制してG1初制覇を果たした(同馬は翌年の英2000ギニーもヌレイエフの失格で繰り上がり優勝)。

    その後も1986年の凱旋門賞(G1・フランス)、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1)、英2000ギニー(G1)などを制したダンシングブレーヴ、1993年の英2000ギニー(G1)を勝ったザフォニック、同年の英ダービー(G1)と愛ダービー(G1・アイルランド)を制したコマンダーインチーフ、2003年のベルモントS(G1・アメリカ)の勝ち馬エンパイアメーカー、2010年の英ダービー(G1)と凱旋門賞(G1・フランス)に優勝したワークフォースなど錚々たるビッグネームを所有してきたが、近年の所有馬の走りはそれに輪をかけるものがあり、英チャンピオンSや英2000ギニーなど10のG1を含む14戦無敗で引退したフランケル(2011、2012年のヨーロッパ年度代表馬)、サセックスS(G1)やジャックルマロワ賞(G1・フランス)を含むG1・4連勝で2014年のヨーロッパ年度代表馬に選ばれたキングマン、2016年のブリーダーズカップクラシック(G1・アメリカ)勝ち馬で、2017年にはドバイワールドカップ(G1・UAE)を制してワールドベストレースホースの座に就いたアロゲート、そして2017年、2018年と凱旋門賞(G1・フランス)を連覇して、2017年にはヨーロッパ年度代表馬に輝いたエネイブルなどが大活躍。驚異的と言える成績を収めている。

    また、世界で最も成功している生産者のひとりでもあり、現在ではイギリス、アイルランド、アメリカに生産拠点を構え、ジャドモントファームズの名の下で経営。生産馬だけで英ダービー3勝(1990年クエストフォーフェイム、1993年コマンダーインチーフ、2010年ワークフォース)を含め、イギリス3歳クラシックを完全制覇。フランス3歳クラシックも、仏ダービー2勝(1990年サングラモア、2015年ニューベイ)を含めて完全制覇している。これまでに生産したG1馬は前記したフランケル、キングマン、エネイブル、ザフォニック、コマンダーインチーフ、ワークフォースを含め100頭を超す。イギリスチャンピオンオーナー3回、アメリカエクリプス賞最優秀馬主4回、同最優秀生産者5回。アメリカでは個人名ではなく、ジャドモントファームズ名義で馬を走らせている。

  • ジョン・マグニアJohn Magnier

    1948年2月10日、アイルランド生まれ。
    1966年に父が急死すると、学校を中退し、父のグランジスタッドを引き継ぐ形で牧場経営をスタート。1971年にトレードで手に入れたグリーンゴッドがその2日後にスプリントカップ(G1)を制したことでその名が広く知られるようになり、その4年後の1975年にはヴィンセント・オブライエン調教師(故人、英ダービー6勝、凱旋門賞3勝)や大馬主ロバート・サングスター(故人、英ダービー2勝、凱旋門賞2勝)とともにアイルランドにクールモアスタッドを立ち上げた。

    主にアメリカのセールで良血馬を買い、ヨーロッパで名馬に育てて、種牡馬にして利益を得る、という彼らの当初のスキームは大成功を収め、やがて、200頭を超すような多頭数交配、さらには南半球でのシャトル供用などそれまでの常識を打ち破るようなビジネスモデルを確立した。
    ジョンの息子であるトムとMV(マイケル・ヴィンセント)も牧場の中核を担うようになった現在では、クールモアの名の下で、アイルランド(クールモアスタッド)のほか、アメリカ(アシュフォードスタッド)、オーストラリア(クールモアオーストラリア)にも牧場を構え、イギリス・アイルランド首位種牡馬9年連続10回のガリレオ、ともにアメリカクラシック三冠馬であるアメリカンファラオとジャスティファイ、それにディープインパクト産駒で、日本産馬として史上初めてイギリスクラシック(英2000ギニー)を制したサクソンウォリアーなどを繋養。アイルランドのグランジスタッド、ザビーチズスタッド、キャッスルハイドスタッドの3か所に繋養される障害競馬用の種牡馬18頭も含めれば、その繋養頭数は70頭近くに上る(シャトル種牡馬はそれぞれ1頭とカウント。2019年9月6日現在)。かつては、ガリレオの父でイギリス・アイルランドチャンピオンサイアー14回のサドラーズウェルズ、イギリス・アイルランド・フランス・オーストラリアでチャンピオンサイヤーに輝いたデインヒルなども繋養した。

    馬主としては、クールモアという名義はなく、ジョンの夫人であるスーザン(ヴィンセント・オブライエン調教師の娘)、それにブックメーカーチェーンの経営者だったマイケル・テイバー、大手ブックメーカーのトレーディングディレクターで、不動産や為替取引などで財を成したデリック・スミスの3人の共有という形がほとんど。アイルランドにバリードイルという自前の調教場を持ち、アイルランドにおける所有馬のほとんどはそこでエイダン・オブライエン調教師が調教にあたる。

    ヨーロッパ年度代表馬に輝いたジャイアンツコーズウェイ、ロックオブジブラルタル、ハリケーンラン、ディラントーマス、マインディング、そして英ダービー(G1)、愛ダービー(G1・アイルランド)、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1)などを制したガリレオ、凱旋門賞(G1・フランス)、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1)などに勝ったモンジュー、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1)やブリーダーズカップターフ(G1・アメリカ)などに優勝したハイランドリールなどがクールモア関係の主な所有馬。

  • ジム・ボルジャーJim Bolger

    1941年12月25日、アイルランド生まれ。
    調教師としてアイルランドの平地チャンピオントレーナーに1991、1992年と2度輝いたほか、生産者・馬主(馬主としては妻のジャッキー名義)としても大成功。2013年には競馬に対する長年の大きな貢献が認められ、ロンジンIFHA国際功労賞の記念すべき第1回目の受賞者となった。アイルランドの平地チャンピオントレーナー21回のエイダン・オブライエン調教師、イギリスの障害チャンピオンジョッキー20年連続20回を誇るトニー・マッコイ元騎手は彼に師事した経験を持つ。厩舎の主戦騎手を務めるケヴィン・マニング騎手は義理の息子。

    農家の生まれで馬は幼少期から身近な存在。大学卒業後は会計士として、大手自動車ディーラーで働いていたが、一方で馬主やアマチュア騎手として競馬に関わっており、やがて1976年に調教師免許を取得。1981年にコンデッサでイギリスのヨークシャーオークスに勝ってG1初制覇を果たした。

    その後もパークエクスプレスで1986年のアイリッシュチャンピオンS(G1・アイルランド)、ジェットスキーレディで1991年の英オークス(G1・イギリス)、セントジョヴァイトで1992年の愛ダービー(G1・アイルランド)とキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1・イギリス)、テオフィロで2006年のデューハーストS(G1・イギリス)、フィンスケールビオで2007年の英1000ギニー(G1・イギリス)と愛1000ギニー(G1・アイルランド)、ニューアプローチで2008年の英ダービー(G1・イギリス)、アイリッシュチャンピオンS、英チャンピオンS(G1・イギリス)、ドーンアプローチで2013年の英2000ギニー(G1・イギリス)、トレーディングレザーで2013年の愛ダービー、プレースカハで2015年の愛1000ギニーを制するなどトップ調教師として活躍し続けている。

    冒頭でも記したように生産者・馬主としての功績も目を見張るものがある。上記したテオフィロ、ドーンアプローチ、トレーディングレザー、プレースカハは全てボルジャー調教師の生産馬で、妻であるジャッキーの馬主名義(共有も含む)でデビューしたほか、ニューアプローチも生産馬でこそないが、妻の馬主名義でキャリアをスタート(テオフィロ以外は現役中にトレード)。妻は2013年に14年続いたクールモアの牙城を崩してアイルランドの平地チャンピオンオーナーにも輝いている。
    また、早くから調教や生産に科学的な手法を取り入れており、2009年には馬の遺伝子を調べることで距離適性を予測するサービスを提供するエクイノム社(現プラスビタール社)を遺伝学者のエメリン・ヒル博士とともに設立した。

  • 注記:イギリスとアイルランドはその競馬の関係性を鑑み、両国で活躍する馬主を紹介した

文:秋山 響(TPC)

(2019年9月現在)

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