大井の雄イナリワンは、旧5歳時の暮れの地元での東京大賞典優勝を最後にJRAへ移籍した。そして旧6歳時の平成元(1989)年には天皇賞(春)、宝塚記念、有馬記念と、芝のGTを3勝もして年度代表馬に選ばれた。ダートでも強かった馬が、芝コースで披露した「切れ味」には、眼を見張るものがあった。決して大きくはない馬体に秘められた爆発力は、それは凄まじいものがあった。
 だが常に圧倒的な強さを発揮できたわけでもない。年度代表馬になった年でさえ、いくつもの辛酸をなめている。たとえば毎日王冠では、オグリキャップにハナ差で敗北を喫している(敗れたとはいえ、後々まで語り継がれるべき名勝負の、一方の主役であったことは確かだ)。続く天皇賞(秋)は6着、ジャパンカップは11着に敗れ去った。当時、オグリキャップ、スーパークリークとともに「3強」と称されていたはずが、有馬記念を迎えるころには、いつの間にかそこからイナリワンが外されて、競馬メディアにおける評価は「2強」になってしまっていた。
 実際、ファンの心理もレース当日の単勝オッズに如実にあらわれていた。有馬記念での人気は、オグリキャップ1.8倍、スーパークリーク3.1倍、イナリワンはなんと16.7倍なのだった。このようなマスコミやファンの側の低評価に対し、たとえばイナリワンの鈴木清調教師は、「みんな、馬を見る眼がないんだなぁ」と内心で呟いていたものだ。
 イナリワンはとても繊細な馬、環境の変化に敏感な馬であった。毎日王冠の反動を懸念され、天皇賞(秋)とジャパンカップのときはそのまま府中に在厩したが、滞在中に食が細り、満足な仕上げができなかった。それが、ジャパンカップが終わって美浦の「わが家」に戻ってからは食欲も旺盛になり、ビシビシと稽古ができたのだった。その変化を理解し、ファンに伝えることのできるジャーナリストが少なすぎた。
 結果はどうだったろう。オグリキャップを楽々ねじ伏せたはずのスーパークリークを、イナリワンがゴール寸前でハナ差、きっちりと差し切ったのである。あのときの柴田政人騎手の「意地」の見せ方は、後にウイニングチケットでダービーを制したときの、鬼気迫る騎乗ぶりに通じるものがあった。
  (渡瀬夏彦)

 SPECIAL MOVIE

H1 天皇賞(春)
H1 宝塚記念
H1 有馬記念

イナリワン
牡馬 鹿毛

昭和59年5月7日生まれ
馬主 保手浜弘規氏
ミルジョージ
1975 鹿毛
Mill Reef
1968 鹿毛
Miss Charisma
1967 鹿毛
テイトヤシマ
1970 鹿毛
ラークスパー
1959 栗毛
ヤシマジエツト
1960 鹿毛

全成績 通算 公営14戦9勝 中央11戦3勝
  年月日 レース名 距 離 着順 騎 手 タイム 調教師
01 1986.12.09 大 井 3歳新馬 ---- D1000 1 宮浦 正行 1.03.2 福永 二三雄
02 1987.05.20 大 井 155万下 ---- D1500 1 宮浦 正行 1.37.2 福永 二三雄
03 1987.06.14 大 井 360万下 ---- D1600 1 宮浦 正行 1.45.4 福永 二三雄
04 1987.06.28 大 井 ライラック特別 ---- D1600 1 宮浦 正行 1.44.1 福永 二三雄
05 1987.08.21 大 井 りんどう特別 ---- D1600 1 宮浦 正行 1.43.2 福永 二三雄
06 1987.09.23 大 井 トゥインクルエイジC ---- D1700 1 宮浦 正行 1.50.0 福永 二三雄
07 1987.11.11 大 井 東京王冠賞 ---- D2600 1 宮浦 正行 2.52.7 福永 二三雄
08 1987.12.28 船 橋 東京湾C ---- D2000 1 宮浦 正行 2.10.4 福永 二三雄
09 1988.03.03 大 井 金盃 ---- D2000 3 宮浦 正行 2.06.8 福永 二三雄
10 1988.04.13 大 井 帝王賞 ---- D2000 7 宮浦 正行 2.08.2 福永 二三雄
11 1988.08.10 大 井 関東盃 ---- D1600 5 宮浦 正行 1.40.9 福永 二三雄
12 1988.11.02 大 井 東京記念 ---- D2400 3 宮浦 正行 2.36.2 福永 二三雄
13 1988.11.23 笠 松 全日本サラブレッドC ---- D2500 2 宮浦 正行 2.50.1 福永 二三雄
14 1988.12.29 大 井 東京大賞典 ---- D3000 1 宮浦 正行 3.17.3 福永 二三雄
15 1989.02.11 京 都 すばるS OP 2000 4 小島 太 2.02.8 鈴木 清
16 1989.03.12 阪 神 阪神大賞典 GII 3000 5 小島 太 3.07.7 鈴木 清
17 1989.04.29 京 都 天皇賞(春) GI 3200 1 武 豊 R3.18.8 鈴木 清
18 1989.06.11 阪 神 宝塚記念 GI 2200 1 武 豊 2.14.0 鈴木 清
19 1989.10.08 東 京 毎日王冠 GII 1800 2 柴田 政人 1.46.7 鈴木 清
20 1989.10.29 東 京 天皇賞(秋) GI 2000 6 柴田 政人 1.59.8 鈴木 清
21 1989.11.26 東 京 ジャパンC GI 2400 11 柴田 政人 2.23.8 鈴木 清
22 1989.12.24 中 山 有馬記念 GI 2500 1 柴田 政人 R2.31.7 鈴木 清
23 1990.03.11 阪 神 阪神大賞典 GII 3000 5 柴田 政人 3.11.3 鈴木 清
24 1990.04.29 京 都 天皇賞(春) GI 3200 2 柴田 政人 3.22.0 鈴木 清
25 1990.06.10 阪 神 宝塚記念 GI 2200 4 柴田 政人 2.15.1 鈴木 清

(年齢は旧表記)






イナリワン号 栄光の軌跡


01 サクラローレル
02 シンザン
03 リユウフオーレル
04 タケホープ
05 コレヒデ
06 エルコンドルパサー
07 オートキツ
08 タケシバオー
09 ハイセイコー
10 サクラスターオー
11 メイズイ
12 マヤノトップガン
13 オンスロート
14 コダマ
15 メジロラモーヌ
16 トウショウボーイ
17 ハクチカラ
18 イナリワン
19 カブラヤオー
20 グランドマーチス
21 エアグルーヴ
22 ミスターシービー
23 ホマレボシ
24 ミホノブルボン
25 ウイルデイール
26 テイエムオペラオー
27 マルゼンスキー
28 セイユウ
29 ダイナガリバー
30 オンワードゼア
31 ホウヨウボーイ
32 メジロマックイーン
33 グリーングラス
34 ジャングルポケット
35 シンボリルドルフ
36 アサカオー
37 ヒカリデユール
38 セントライト
39 ビワハヤヒデ
40 タイキシャトル
41 ハクリヨウ
42 トウメイ
43 ナリタブライアン
44 タマモクロス
45 カネミノブ
46 スピードシンボリ
47 オグリキャップ
48 トウカイテイオー
49 キタノカチドキ
50 メイヂヒカリ
51 イシノヒカル
52 テンポイント
 
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